片目のわたしとガインダー

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そうじの時間、体育倉庫でトシアキとふたりきりになった。  他のメンバーはほうきも持たずに、体育館でバスケを始めてしまった。トシアキも誘われたけど、きっぱり断っていた。真面目にそうじがしたいんだそうだ。わたしには声すらかからなかった。  わたしは、黙々とほうきがけをしているこの葉っぱくんに呼びかけた。  「トシアキは、バスケ行かないの?」  そう聞くとトシアキは、葉っぱに包んだ顔をゆっくり上げた。ちいさな穴から覗くその目つきは、何故か意外な言葉でも耳にしたみたいだった。  「君はぼくのこと、トシアキって呼ぶんだね」  「は?」  「それは、なぜ?」  私がそう呼ぶのを、あたかも不思議なことであるみたいに、これまた不思議な質問をするトシアキ。  「そりゃ、あんたがトシアキだからでしょ」  この言葉を聞いて、葉っぱの向こうの顔が、ぱ、と明るくなったような気がした。  「意味分かんない。そもそもあんた、なんでそんなお面つけてるわけ?」  「きみがその眼帯を外さないのにも、わけがあるんだろ?それと同じだよ」  質問するだけ無駄だった。聞けば聞くほどこいつの謎は深まるばかり。木から落ちる木の葉をつかまえようとしても、それは風に流れてひらひらと、手の間をかわしていくみたいな、どうしようもない気分。  トシアキとこんなふうに話すのも初めてだ。そして結局、訳のわからないやつということしか、わからなかった。
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