心の震源に大地震を!

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心の震源に大地震を!

少年たち「お願いします!動かなくなった母さんの心をもう一度動くようにしてください。」 少年たちの依頼は、廃人となって何もしなくなった母親の空虚な心に【感動】を与えて、もう一度 明るく優しい母親を取り戻してほしいとのことだった。 少年たちの名は、兄は悦也(11歳)・弟は泰史(6歳)といった。 ウィルメット「お母様を・・・」                 バタ!! 突然、弟の泰史のほうが倒れた・・・・ ウィルメット「!!」 悦也「泰史!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 兄弟はここ7日、何も口にしていなかったらしい・・・母親は、廃人となっているため 仕事も家事もしない・・・・ そんな弱りきった身体で、この秋の冷たい雨風に当たってウィルメットを待っていたのだ・・・・ まだ、6歳の泰史が熱になって倒れてしまうのも、無理はない・・・ ただでさえ、あいりん地区は不衛生で劣悪な環境だというのに・・・・・ 年齢の割に栄養を取っていないため、2人の年齢は低く見えたのかもしれない・・・・ 大阪府西成の小さな古いホテル・・・ この一室にウィルメットは泊まっていた。 彼女は泰史をおんぶし、悦也と共に自分の部屋に入れた。 そして、兄弟2人にタオルを手渡した。 ウィルメット「まずは、お2人ともお風呂に入ってください。雨で身体も冷えているでしょうし・・・・ それに、どうやらしばらくお身体を洗っていなかったようですし・・」 悦也「に、匂いますか?」 ウィルメット「まあ少々・・・ただ私は慣れていますので大丈夫です。」 悦也「な、慣れている?」 ウィルメット「とにかく、今何か食事を用意するので、そこにシャワー室があるので入ってきてください。」 慣れているって・・・どういうこと? ウィルメット「38度5分・・・だいぶありますね・・・・」 ウィルメットが温度計で、泰史の熱を測る・・・・ 兄弟2人がお風呂から上がった後、ウィルメットは、弟の泰史を部屋に1個しかないベッドで寝かせ 休ませた・・・ ウィルメット「泰史様は、このままお休みになったほうがよろしいですね。」 泰史「でも、それじゃあお姉ちゃんの寝る場所は・・・」 ウィルメット「私のことはお気になさらず、まずはご自愛ください。」 泰史は、ウィルメットの言葉を聞くと安心したように眠りについた。 この人、優しいんだろうけど・・・ まるでロボットのように無表情だから、どうやってお礼を言ったらいいんだろう? と戸惑う悦也・・・ 悦也「す、すいません・・・何から何まで・・・」 悦也は、顔を真っ赤にしながらお礼を言った・・・ ウィルメット「いえ、お気になさらず・・・それよりも、もう午後20時半・・・いいのですか?お母様は心配しているのでは・・・」 悦也「今の廃人になった母さんは僕らのことなんて心配してないから大丈夫ですよ。」 悦也の表情が暗くなり、そう言った・・・ ウィルメット「・・・・・・・・・・・事の顛末をお話しいただけますか?」 悦也 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 悦也と泰史が、もっと小さかった頃・・・・・ あいりん地区で、日雇い労働をしていた父は職場でのイザコザで上司を殴り殺してしまった・・・・ 父は警察に捕まる前に、あいりん地区から逃げ出し、どこに行ったかわからない・・・ そして、現在も指名手配犯として、追われている。 悦也「父さんが殺してしまったのは、あいりん地区でも有名でみんなから好かれていた人気者のおじさんだった・・・」 そのため、悦也の一家は、有力者を殺した殺人家族・憎むべき仇として地区内で嫌がらせを受けることになる・・・ 悦也「母さんは職場で孤立し、めちゃくちゃ酷い事を言われたり、無視されたりしたんだ・・・」 一家は、あいりん地区から離れようとも考えたが、引っ越すお金があるならあいりん地区などで働いていない。それに、ネット社会の今、人殺しをした父がいる家族なんて普通の社会じゃ家さえも貸してくれる所もないだろう・・・ 悦也「小さな泰史は、まだ何も状況がわかっていない・・・現実を伝えたらきっと傷つく・・・だから僕らは学校にも行ってないんです。どうせ人殺しとイジメられるだけですし・・・まあ、学校に行けてないのは母さんが給食費を払ってないのもあるんですけど・・・」 それから、母親は、辛すぎる現実のあまりおかしな異常行動を取るようになった・・・・ 心が限界だったんだろう・・・・ そして、そこから逃避しようと母親は薬に手を染めてしまった・・・・ 今も家にある家具など全財産を売ってまで薬を買い続けている・・・・・ ウィルメット「そうですか、薬物を・・・・・・」 悦也「警察にバレたら、泰史がお母さんが悪いことをしていたとわかってショックを受ける・・・ あんな母さんでも俺達の母さんだ。泰史から母さんを奪うのは残酷すぎる・・・・まだ、あんなに小さいのに児童養護施設に引き取られるなんてあんまりだ。だけど、薬物に心を奪われた今の母さんをどうやって直したらいいか・・・」 話しているうちに、悦也の目には大粒の涙がこぼれ始めていた。 ウィルメット「それで、私にご依頼していただいたのですね・・・・でも、お母様の収入もない、そのような状況で依頼料10万はどのように・・・」 悦也「それが・・・」 悦也の話によると、ある日20万円ほどのお金が封筒で、家の前に置かれていたらしい。 手紙には「使ってください」と書かれているだけで、差出人は誰か不明のままだ。 とにもかくにも悦也は、その20万円のうちの10万円を使い、ネカフェで見つけた【感動提供人】の公式サイトから振り込んだってわけだ。 ウィルメット「なるほど・・・」 悦也「警察にも相談できない、どうしようかと思ってネカフェでインターネット見てたら、【感動提供人】のサイトを見つけて、失った心を必ず取り戻します!って書いてあったから一か八か依頼してみたんだ・・・」 その時、ウィルメットは何かに気づいたようにジーっと悦也に自分の顔を近づけた。 悦也「な、なんですか・・・・」 悦也は、またまた顔を真っ赤にする・・・女の子とこんなに近い距離になったのは始めてだから 心臓の鼓動が急にドクドクと早まる。 ウィルメット「悦也様 まだ、何か隠してらっしゃいますね・・・」 悦也「え! う、うわああ!」 ウィルメットは後ろに回り、悦也の上着の裾を素早くめくる・・・ 彼の背中や腰には酷い青あざがいくつもあった・・・・ ウィルメット「先程から悦也様は、無意識で背中をおさえていましたから・・・やはりお母様から暴力を受けていたのですね・・・」 悦也は母親から虐待を受けていたのだ・・・・・ 悦也「僕が母さんが薬を買うのを辞めさせようと止めると、母さんは、その時だけ廃人から蘇ったように、暴れ回るんです。その時についた傷です。」 ウィルメット「そうですか・・・恐らく今のお母様にとって生きる意味とは薬を買うことだけなのですね・・その意味を守ろうときっと必死で防衛しているのだと思われます。」 今の母親にとって生き甲斐は薬物・・・・それを奪おうとする悦也は母親からしたら悪魔のように 見えているのかもしれない・・・ ウィルメット「状況は大体理解いたしました。・・・では、次にお母様の好きなものを教えていただけますでしょうか?」 悦也「はい?好きなこと?」 ウィルメット「ええ、人の心とは、あまりに激しいショック(大きすぎる悲しみや苦しみ)を受けると、生存本能から、何も考えないように活動を止めてしまうのです。生きるために、辛い現実から目を背けるのが人間の防衛本能ですから。結果、強いショックを受けた心は停止し、無の状態になったため何も行動を起こさなくなる。 お母様の場合は、自分にとって気持ちいい薬を摂取している時だけ動く・・・・ つまり、お母様にとっては薬だけが心躍る感動体験なわけです。 しかし、薬を摂取し続けることはお母様をゆくゆくは破滅の道へと追い込みますから・・・ 薬に変わるような感動体験をしていただき、こちらの世界に戻ってもらわなくてはなりません。 そこで、私たち感動提供人はお母様のように心が動かなくなった方の心をもう一度動かすために、何かお母様がワクワクするものを見つけ出し、お母様の心の奥底に眠る【心の震源】を探し出し、心に【巨大地震(感動体験)】を起こすことで、人間らしい心を取り戻していただくのです。」 悦也「心の震源?心に巨大地震を起こす・・・・・・・なんか中二病臭い匂いがするな~。あ、すいません・・・・」 ウィルメット「いわばもう一度、心を動かすトリガーを見つける・・・と我々感動提供人が使う 【感動提供マニュアルブック】に書いてあります。」 【感動提供マニュアルブック】には、人を感動させるため、人の心を動かすための知恵がいくつも ある最強の本だ。感動提供人だけが持つ商売道具なのだ。 悦也「って!マニュアルかい! つーかそんなブックあるんですね。 でも薬に夢中な母さんだし・・薬みたいに依存性が高いものじゃ他のことに興味なんて向かないんじゃ・・・」 ウィルメット「確かに・・一度薬を使用してしまうと、それ以外に何の魅力も感じなくなるみたいですかね・・・」 悦也「でも、昔から母さんはロック音楽が好きだったかな・・・はは、でもこんなんじゃ何の参考にもなりませんよね・・・」 ウィルメット「なるほど・・・ロック音楽ですか・・・・」 悦也「あ、そうだ!!・・・さっき母さんが寝てる間に薬を取ってきたんですよ・・・ウィルメットさん薬学の知識もあるって公式サイトのプロフィールに書いてあったから、見てもらおうと思って・・・・」 ウィルメット「お母様が気付かないうちに薬を取ってきたということですか?」 悦也「そう!そう!」 ウィルメットは悦也が手渡した袋に入った粉を見る・・・・ そして手のひらに何粒か粉を乗せ、匂いをかいだ・・・・ ウィルメット 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 悦也「え・・・どうしたんですか?」 ウィルメット「・・・・・・・・・・・・非常にまずいですねえ・・・」 悦也「え?」 ウィルメット「悦也様、今すぐご自宅の場所を教えてください!お母様が大変なことになります!」 ウィルメットの語気が少し強くなっていた・・・・ 一体、大変なこととは・・・・・ 【~作者から~】 読んでいただきありがとうございます。 Twitterや他のサイトでも作品を投稿していますので、ご意見・アドバイスなどありましたらお願いします。 ・Twitter https://twitter.com/kj_nmk/photo ・小説家になろう https://syosetu.com/usernovel/list/
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