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感動提供人の少女
「【感動提供人】の【カーリーン・ウィルメット】でございます。依頼主の方で間違いないでしょうか?」
この世には、不思議な仕事があるものだ・・・・
【感動提供人】・・・・・・・
それは、依頼主の人々の心の中にある『心の震源』を、様々な方法を使って動かし震わせ、感動体験を与える職業・・・・
いつ生まれた仕事かは不明・・・・
16歳の少女・・・・【カーリーン・ウィルメット】もその感動提供人である。
大きな目には底が見えぬほど透き通った瞳・・・・細いがハリのある滑らかな銀色の髪・・・
まるで彫刻のように、整った顔立ち。
彼女のポーカーフェイスは常に無表情だから余計、彫刻に見えてくる。
青空のような透明感から、まるで彼女が天使か神様に見えてくる。
身につけている暖かそうな美しいクラシック洋服とクラシックコートに似合う容姿だ。
だが、今回彼女が依頼主から指定された落ち合い場所は、彼女のその美しい容貌には、あまり相応しくないような所だった・・・
大阪府西成あいりん地区・・・・
訳ありの者たちが最後に行き着く場所・・・・
日雇い労働者、ホームレス、追われ者の犯罪者たちの巣窟・・・・・
2000年代に入ってもなお暴動が起こる治安の悪さから「日本で一番危険な町」と称されることも多いこの場所で、
感動提供少女【カーリーン・ウィルメット】に依頼してきたのは、まだ7・8歳にも満たぬであろう
小さな2人の少年だった・・・・
泥だらけの服・・・・泣き晴らしたような赤い目・・・・
しばらく洗ってないであろう髪はカチカチに固まっており・・・異臭が漂っている・・・
秋風にはしみる穴だらけの服・・・・
おまけに今は雨が降っているから震えるような寒さであろう・・・・
「お2人が・・・私の依頼主さんでいらっしゃいますか?」
少年たちは、ウィルメットの問いに小さく頷いた。
ウィルメットは少年たちの目線に立つよう、腰を下げた・・・・
こんな、小さな子たちが・・・依頼?
初回費用で10万はかかる【感動提供人サービス】をどうやって?
ウィルメットは、興味と探るような視線で、少年たちにもっとその彫刻のような顔を近づけ
質問する。
ウィルメット「では、ご依頼内容を改めてお教えください。」
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少年たち「か、母さんの心を感動させて、元の優しい母ちゃんに戻してください!」
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