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昔むかしあるところに、働き者で賢く、とても優しいオーエンという青年がいました。そんな彼は村の人たちからも頼りにされていました。
ある日オーエンは、仕事の合間にお気に入りのエルダーの木の下でひと休みしよう思いました。ちょうど今なら甘い香りのする白い花が満開であるということをよく知っていました。
幼いころから大切にしている竪琴を持ってエルダーの木に向かうと、風に乗って柔らかい音色が聞こえてきます。よく見ると木の下に人影がありました。
今までこの場所で誰かと一緒になることはなかったので、オーエンは不思議に思いました。それでも新たな出会いに胸躍らせ、ずんずん進みます。
近づいていくとその人影が美しい女であることが分かりました。光に透けるはちみつ色の髪と、真っ白な肌と溶けあう白いワンピースが風に揺れています。瞳を閉じ、横笛にくちびるを当てる姿はまるで絵画のようでした。
あまりに美しい光景だったのでオーエンは立ち止まり、見とれてしまいました。
すると女はオーエンの気配に気づいたのか演奏をやめ、話しかけてきます。
「あら、こんなところで何してるの? 具合が良くないの?」
声をかけられ驚いたオーエンはどぎまぎしながら答えました。
「えっ? あっ、いや大丈夫だよ。ここに人がいるのは珍しいなと思って」
ぐぐぐと笑いながら女は答えます。
「確かに。そうかもね。私はエーファ。あなたは?」
「僕はオーエン。この先にある村に住んでるんだ」
オーエンは来た方を指さして言いました。
「そう。よろしくね、オーエン」
「ああ、こちらこそよろしく、エーファ」
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