ネイル童話「オーエンときれいな白鳥」

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 この日以来、ふたりは毎日エルダーの木の下で会うようになりました。  楽しかったことや嬉しかったことを話したり、一緒に楽器を演奏したりしました。エーファの話に出てくるものに聞き覚えはなく、どうやらこの辺りの人ではないようでした。  そんなふたりはすぐに仲良くなり、恋に落ちました。  出会ってから半年ほど過ぎたある日、オーエンはエーファにプロポーズをしようと思いました。秋の香りのするよく晴れた日でした。 「エーファ、君を愛している。結婚しよう」  オーエンはエーファの白く柔らかい手を取り、真っ直ぐに目を見て伝えました。  エーファは一瞬目を見開き頬を染めましたが、すぐにその瞳は光を失いました。 「ありがとう、嬉しいわ。でもね、あなたの思いに答えることはできないの。……私は、人間じゃないから。十一月一日のサウィンの夜、私は白鳥の姿に戻り、ここを離れなければはりません」  突然の告白に驚きを隠せないオーエン。でも彼にとってそんなことは関係ありませんでした。 「人間でも妖精でも、白鳥だって構わない。僕は君が好きなんだ。僕たちならどこへだって行けるさ」  オーエンの優しく真っ直ぐな言葉に、エーファは涙をひとすじ零しました。その雫は大地に染みこみ、色とりどりの花を咲かせました。  美しくも異様な光景にあ然とするオーエンを見たエーファはこう告げます。 「あなたと過ごした時間はとても愛おしくて幸せなものだったわ。素敵な思い出をありがとう。あなたの未来に祝福を」  柔らかくほほ笑み、オーエンの額にひとつ口づけます。気づいたときにはエーファの姿はなく、額の温もりだけが残っていました。
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