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カラスの鳴き声で目を覚ました。
身体中が痛い。
急激な吐き気が襲ってきて、矢島は身を起こすと、地面に手をついて叫ぶように嘔吐した。
視界に暴力的なまでの緑色が飛び込んでくる。
なんだこれは。
草?葉っぱ?どこだここは!
吐きながら涙が浮かぶ目を見開きあたりを見回す。
矢島が倒れていたのは草むらだった。
四方を壁で囲まれている。
3階建ての建物のちょうど中庭のようだ。
頭上にピンク色の空が見える。
白い壁にオレンジ色の光が当たっていて、真上には星が一つ見える。時刻は夕方だろうか。
「ここは――――」
改めて建物と中庭を見比べる。
建物に人気はなく、中庭には雑草が生い茂り、長く使われていないようだ。
しかしーーー。
なんだ、この漂う既視感は。
ーーー見たことがある。来たことがある。
思い出せ。
思い出せ思い出せ思い出せ。
「―――矢島君?」
後ろから声を掛けられる。
そこにはスーツ姿の女性が立っていた。
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