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「雨宮……!!起きろ!!」
矢島は彼の肩を掴むと激しくと振った。
「―――んん……」
とりあえず生きている。しかしここでゆっくり起こしている余裕はない。
矢島は彼のシャツにトリアージカードを貼り付けると、再び病室を飛び出した。
これでトータル3人。
妹尾は2階で誰かを見つけただろうか。
「―――!」
手に握ったトリアージカードを見下ろす。
そうだ。
妹尾が見つけたとしてもこれを貼り付けないと意味がない。
つまり自分は3階を巡回した後、妹尾が見つけた人間たちにこれを貼りに行かなくてはいけない。
病室で寝ていればまだいいが、もしかしたら1階の診察室や外来受付の中に潜んでいる場合もある。
時間がない。
二人ではあまりにも効率が悪い。
―――考えるな……!走れ!矢島!!
また頭の中で声がした。
―――“矢島?”
病室を開ける。
そこにはベッドに座って、窓の外を眺める後ろ姿があった。
「おい!大丈夫か!」
声をかけると男はこちらを振り返った。
「―――矢島?」
それは、3年前よりも見違えるほど逞しくなった、猪股桂一郎だった。
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