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◇◇◇
2階に下りたところで走ってきた猪股とぶつかった。
「どうだった!!」
「見つけたか!」
二人同時に言う。
「―――」
猪股は二、三歩後ずさりすると、続いて下りて来た雨宮を見つめた。
「……雨宮を―――見つけたのか?」
「いや、違う」
矢島は目を伏せた。
「雨宮はお前よりも前に見つけてた。他に見つけた女は時間切れで死んだ」
「――死んだ……?」
「お前はどうだった?」
猪股の表情からしていい結果じゃないことは分かった。
それでも聞かなければならない。
「あの車椅子の男とは別に、もう一人いたんだけど……」
猪股が振り返ると、そこには男が立っていた。
「君たちもゲームの生き残りかい?」
男は矢島と雨宮を順番に見てから言った。
「助けてくれてありがとう!俺は窪塚和也。よろしく!」
場違いな明るい雰囲気に矢島が窪塚を睨み上げる。
「ーーー全部で、何人いるんだ?」
雨宮が前に進み出る。
「7人……だよな?矢島」
猪股が自信無さげに聞いてくる。
「じゃあ、3階のトイレの女も合わせて、一応は全員見つけたわけだ」
独り言のように発した雨宮の声に矢島は視線を上げた。
矢島、妹尾、雨宮、猪股、窪塚とかいう男、車椅子の男、そして女子高生。
本当だ。
これで7人全員だ。
初めから倉科と高野はメンバーに入っていなかったということか。
肩の力が抜けて、矢島は尻をついて座り込んだ。
「ーーーあ、おい……平気か?」
さっぱり疲れた様子のない猪股が隣にしゃがみ覗き込む。
「なあ、”車椅子の男”ってお前の知り合い?」
耳に口を寄せてくる。
「―――?車椅子に乗ってる知り合いなんていねえけど」
「え、でも。お前の声を聞いて、“矢島君もいるの?”って聞いてきたから」
「―――――」
矢島は視線を上げた。
ーーー“矢島君”
あの少し鼻にかかった声を思い出す。
矢島は何かに導かれるように立ち上がった。
「―――あ、おい……!」
猪股が追いかけてくる。
そのまま南側の廊下を抜け東側の廊下に出たところで、車椅子をこちらに向けて押している妹尾の顔が見えた。
「あ、矢島君……」
矢島は駆け寄って車椅子の人物を見下ろした。
小柄な身体。
透けるような白い肌。
しかし―――。
真っ黒な髪の毛から、茶色い瞳がこちらを見上げていた。
「―――海藤」
敢えてその名前で呼ぶと、海藤充は切なそうに微笑んだ。
「………久しぶり。矢島君」
声変わりが終わった低い声。
それは薬で成長が止まっていた彼が、この3年間、人として健全に過ごしたことを示していた。
視線を落とす。
しかし、この足は一体―――?
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