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堀内の後ろにずらりと並んだ7人の鳥のマスクをつけた人間たちはこちらを見つめた。
いや、正確には見つめた気がした。
マスクは黒革製で目の部分には透明なレンズが入っているものの、遠くからでは照明を反射して光ってるようにしか見えない。
禍々しいマスクとは裏腹に真っ白な白衣を着て、後ろに手を組み整然と並ぶ姿は、不気味以外のなにものでもなかった。
総じて髪の毛が白い。監獄実験の際の海藤は水色っぽかったが、彼らのそれはまるで老人のように真っ白だった。
「ーーーペスト医師のマスクか。趣味が悪い」
雨宮が呟いた言葉に堀内が感心したように頷く。
「さすが雨宮君。よく知ってるわね」
堀内は目を細め話し出した。
「ペストとは17世紀、世界的なパンデミックを引き起こした病気で、何億もの人が亡くなったの。
ヨーロッパではペストの治療に当たる医師たちは、このように鳥のくちばしのような形のマスクを着用していたのよ」
堀内は彼らを振り返りながらフフフと笑った。
「可愛いでしょ?」
矢島は全く可愛くない7人を睨んだ。
「それで?戦争でもおっぱじめようってのか」
「………あら、戦争なんかして、彼らに勝てるとでも思ってるの?」
堀内が挑発するように肉の付いた顎を上げながら矢島に近づく。
そしておもむろに手を差し出すとそれを返して矢島の股間に触れた。
「……な……!」
妹尾が目を見開く。
「―――悪いけど、豚相手には勃たねえぞ」
矢島が睨んだまま言う。
堀内は構わずに口の端を吊り上げて笑いながら、矢島の股間を撫で上げた。
「……種として強い方を残すの」
「―――種として―――?」
矢島は堀内の手を払うと、彼女を睨み上げた。
「欲求不満かババア。お前の大好きな男は今回は不参加みたいだしな?」
「――――」
堀内の目がわざとらしいまでに見開かれる。
「誰のこと?」
「とぼけんなよ」
矢島は首を傾げながら笑った。
「お勉強におデートに忙しくて、構ってもらえなかったか?」
猪股と雨宮も顔を見合わせてから堀内を見つめる。
「―――ああ。倉科君?」
堀内は小さく頷いた。
「勿論彼も“誘った”んだけどねー」
「――――」
矢島の顔から笑顔が消える。
「無駄に抵抗されちゃってぇ」
「ーーてめえ……」
「面倒くさいから………殺しちゃった」
「っ!!」
「お前……っ!!」
雨宮と猪股がにわかに殺気立つ。
―――まさか。
まさか、あいつがそんなに簡単に……?
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