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矢島は部屋を飛び出した。
猪股と雨宮が同時に振り返る。やはり食堂にはいない。
「あ、矢島……」
猪股が何か言おうとしたが脇を通り過ぎ、トイレを覗く。
いない。
部屋だろうか。
南側に並ぶ部屋を次々に開けていく。
「きゃっ!」
妹尾の白い背中が見える。
どうやらちょうどいい甚平風の入院着を見つけたらしく、着替えようとしていた。
矢島は動じることなく、上半身裸の妹尾に言った。
「海藤は」
「―――海藤君……?」
頬を真っ赤に染めながら胸元を隠した妹尾は、それでも矢島の問いに答えた。
「ーーわかんない。病室にはいないの……?
矢島は妹尾の病室も後にすると走り始めた。
「―――あの馬鹿……!一人でうろちょろと!」
何があったのかは知らないが、海藤は車椅子に乗っている。
階段は下れないし上れない。
エレベータの前まで来た。
もしかして1階の礼拝堂に行ったのか。
はたまた2階のセレクターたちに会いに行った?
上の表示板を見上げる。
「………R……?」
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