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ーーーまるで夢物語だった。 危険因子の人物をバーチャルに作り出し、テレビゲームの如くその人間と対峙し、勝利する。 そんな子供だましのような方法で、自分の中の砂子みちるが本当に消滅するのだろうか。 「とにかくまずは、”砂子みちる”の詳細なデータが必要だ。亡くなった本物の砂子みちるじゃないぞ。君が脳内で作り上げた方の砂子みちるだ」 そう言うと彼は海藤が協力するともしないとも言わぬうちから質問を始めた。 「詳細にかつ正確に頼むよ。“砂子みちる“の年齢は?」 それから、髪色、目の大きさ、瞳の色、鼻の高さ、唇の形状に至るまで、200以上の質問に答え、30枚以上の絵を描かされた。 その後、期間にして1年間、回数にして20回のリテイクを経て、砂子みちるの外観が完成した。 「―――本当にゲームみたいだな」 回転する3Dの砂子みちるを、タブレット画面で見ながら海藤は呟いた。 「そうだろう。これを元に毛穴や質感、重力や温度を加えることで、バーチャルはより本物と区別がつかなくなる」 「そこまで再現できるんだ……」 海藤は感心するやら空恐ろしくなるやらで、首を捻った。 「あとは君次第だ。脳内とはいえ危険因子の砂子みちると対峙して、君がうち勝てるかどうか」 垂水は君次第だといいながらも有無を言わせぬ視線でこちらを睨み落とした。 「ーーFight(戦う)? ……or ……Fight(逃げる)?」 「…………」 海藤は再度、画面の中の砂子を見つめた。 彼女はこちらを見つめると真っ赤な目を光らせながら、格闘ゲームのキャラクターよろしくファイティングポーズをとってみせた。
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