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ランニングコースは終わりに差し掛かり、ようやく肉眼でもベンチにいる彼女が確認できるようになった。
彼女も走っている死神に気づいたようだ。
死神は他の人からは見えないけれど、ターゲットからは見えるのだ。
「おそい」
空になったミルクティーのカップを持った彼女は頬を膨らませて言う。
「すまん」
死神は謝る。
汗などは出ていないし息も切れていないけれど、走ることには慣れていないから、死神と言えどもよくわからない疲れはある。
そもそも、この体の仕組みがどうなっているのかも死神にはわからないのだ。
だから、本当はこんなことをしても意味があるのかすらわかってはいない。
それよりも……
「三つ目のお願いは決まったのかい」
死神は彼女の隣を歩きながら聞く。本当は歩かなくても飛べるのだが、少しでも歩いた方がいいと思って歩いている。痩せるために。
「う〜ん。まだ。でも、まだ一ヶ月もあるんでしょ? 気長に考えるよ」
彼女は空のカップを脇にあったゴミ箱に捨てた。
なぜ死神が走らされていたのか。
それは、この三つのお願いに関係している。
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