死神と彼女

　そもそも、誰にも彼にも死神がやってくるわけではない。生死の綻びが出来て予定外に生命を献上せねばならない場合ができた時にのみ、神様より選ばれたものにだけ死神がやってくるのだ。

　それは正にくじ引きのようなもので、寿命でも、病気でも、事故でもないのにこの世を去らねばならない。
　しかしそれは、他の人から見ればちゃんと寿命か病気か事故に見えるように細工される。死神の手によって。

　そのハズレくじを引いたターゲットはあまりにもかわいそうなので、死神は三つのお願いを叶えてやる決まりになっている。
　但し、生き返らせるとか、代わりに別の人の命をとか、そういう願いをした場合は無効となり、即座に死を迎えることになる。他人の生き死にに関する願いも、もちろん叶えることはできない。

　この三つの願いはつまり、思い残すことのないように、ただ幾ばくかの願いを叶えるためにのみ存在する。