死神と彼女

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 死神が今回のターゲットである彼女の前に現れた時、いつものようにこの三つの願いの話をした。  ターゲットは決まって、最後に贅沢がしたいだとか、残していく家族に不自由がないようにだとか、最後に誰それをギャフンと言わせたいだとか、そういった願いをするものだ。  だから死神は当然、この彼女も同じような願いをするものと思っていたわけだ。  しかし、彼女は少し違っていた。 「じゃ、死神さん、痩せて」  彼女は考える間もなく一つ目の願いを言った。  死神は面食らった。何だその願いは。  驚きは隠して死神の威厳を保ちつつ、彼女に理由を尋ねる。 「だって、死神に迎えに来られて死ぬって、何だかかっこいいじゃない? どうせならシュッとした死神がいいもの。あなた、痩せれば結構イケメンだと思うのよね」  どうせまわりには見えないのにと言うも、「私の気持ちの問題よ」と返される。 「あ、二つ目の願いも決まった。痩せてシュッとした死神さんとデートする! うん、いいじゃん、これが冥途の土産ってやつ?」    彼女はウキウキして話す。  ウキウキ。一ヶ月後には死ななければならないというのに。 「もっと自分のことに関する願いを……」 「いいから、私の気持ちの問題だって言ってるでしょ。痩せて、シュッとした死神さんとデートするの! わかった?」  そこまで言われると死神には返す言葉がなくて、しぶしぶ「痩せる」そして「デート」という二つの願いを引き受ける。  何故か、彼女に与えたはずの一ヶ月の猶予期間は、自分に与えられた一ヶ月間になってしまった。
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