死神と彼女

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「今どこにいるの?」  死神は今、スイーツバイキングに並んでいる。眼鏡以外の服装は変えてわざわざ人間になりすまして。  でも、それを彼女に正直に言うのはまずいだろうか。 「いつもの公園で走っている」  適当に答えておく。  そもそも、人間界の食べ物というものが美味しすぎるからいけない。ターゲットを迎える時のみに与えられたこの至福の時間を我慢するわけにはいかないのだ。 「そちらは何をしているのだ? 買い物か?」  死神はアパレルショップに入っていく彼女の頭の中に話しかける。 「うん。死神さんの服を探しに。身長は180くらいあるよね? 痩せるのを前提に選ぶから、そっちも頑張ってよね」  頭の中に声が返ってくる。  死神は少し考えて、スイーツバイキングの列から外れた。  そしてまた、いつもの服装に戻ると、ランニングを始めた。
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