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「今どこにいるの?」
「いつもの公園で走っている」
これは嘘ではなかった。
死神はあの日から毎日、いつもの公園で走っていた。
死神というものは食べずとも生きていけるので、あの体型がどうやって維持されていたのかはわからない。
相変わらず汗もかかないし、息が切れるわけでもない。よくわからない疲れが残るのみだ。
けれど、死神の体はあの日を境に少しずつ痩せ始めていた。
それはそれは太っていた体は、けっこう太っているくらいにはなっている。
「君は相変わらず働いているのかい?」
死神は休憩中と思しき彼女の頭の中に話しかける。
「そ。とりあえずあと三週間で片を付けなきゃ」
死神は仕事は辞めてもいいのではないかと言ったのだが、彼女は辞めなかった。
辞める一ヶ月前に報告するのが会社の決まりだというのだ。
彼女は死神が来たあの日、すぐに会社に辞める旨を報告した。
もちろん死神が来たなどとは言わず、一身上の都合でだ。
「私、人に迷惑をかける人生は嫌なの」
そう言った彼女は、今日も今まで通り、いや、それ以上に働き続けている。
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