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白猫
家に帰るとドアの前に真っ白な子猫がいた
キチンと座り、黙って私を見上げていた。 近づいても微動だにしない。
子供の時、犬は飼った事はあるが、猫はない、さあどうしたものか?
躊躇したが猫をドアの前に残して家に入った。
昼間は秋晴れで天気が良かったため、放射冷却で逆に夕方からは冷え込み始めていた。
5分後、玄関ドアを開けると猫はまだそこにいた。
頭を撫でてみたが嫌がらず、大人しかった。 背中側からそっと抱き上げると、一瞬ビック体を硬くしたが、後は無抵抗で体を預けてきたので、猫の背中の匂いを嗅いでみた。
埃っぽい毛布と太陽の匂いがした。
私の能力が動物にも通用するかは疑問だったが、コイツはまだ死ぬ時期では無いのかも知れない。
「入るか?」
と言いながら、玄関ドアを開けると
ニァーと始めて一鳴きして、長い尻尾をピンと立てて、クンクンとあたりの匂いを嗅ぐ。そして背中をゾクゾクさせながら家の中に入って行く。
ツナ缶と水を小皿に移し、猫の前に出すと食べ始めた。 その間にダンボールに膝掛けを入れて簡単な猫の小屋を作る。
ご飯を食べ終えた猫を、猫の小屋に移すと、私はノートパソコンで子猫の飼い方と必用な道具の検索を始めた。
暫くパソコン画面を見ていると、猫は小屋から出てきてゴソゴソと私の膝の上に乗ってくる。
猫は膝の上から私を見上げ、ニァーと鳴いた。 しばらく撫でているとその場で眠り始めた、
私はこのメス猫にカリンと名前を付けた。
カリンはこの日以来、誰の膝の上にも乗ることはなかった。
それから18年後の冬の日だった。
その日は朝から冬の嵐だった
テレビを見ていると、寝床で寝ていたカリンが珍しく昼に起きてきた。
私には彼女の死期が近い事はわかっていた。
カリンは私の元にやってくると、ゆっくりと私の膝の上に乗った。
私は彼女の背中を愛おしく撫でた、背中の肉は落ち背骨がゴツゴツする。
かつてはビロードのようだった白い毛並も、今は毛羽立ち水分を失っていた。
「お互い歳をとったな」
と声をかけると、始めて家にやってきた日のように私を見上げた、そしてニァーと一言弱々しく鳴くと、永遠の眠りについた。
私は最後に「お疲れ様」と彼女に一言声をかけた。
彼女は礼儀正しく、こんにちはと、さよならの挨拶をして、私のもとを去っていった。
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