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カリン
朝起きると寝ていた布団の中に猫がいた。 昨日、家の前で拾った猫だった。
下手に寝返りをうっていたら潰していたなとゾッとした。
カリンはそれほど小さく儚く見えた。
そうならないようにと、猫の寝床を作り寝かしつけたのだが、夜中に布団へ移動してきたらしい。
折角の努力が無駄になり少々腹がたったが、カリンの温もりと柔らかさの前には全てが消し去られていった。
必要な物はAmazonに発注をかけたので、前日のうちに急ぐトイレや餌などだけを、ホームセンターで買い揃える。
そして「これぞ箱入娘」と呟き、ダンボールにカリンを詰めると近くの動物病院に連れていって健康診断を受けた。
真っ白なカリンは真っ黒だった。
白髪の穏和な獣医師は、笑顔でカリンにノミとダニと寄生虫がいる事を教えてくれた。
こいつ、そんな体で俺の布団に潜り込んできたのかと頭にきたが、
「後は軽い栄養失調位かな?元気な子だ… 落ち着いたら予防接種に来なさい」
と聞くとホッとして怒りを忘れてしまった。 虫下しの薬をもらい、箱入娘を抱えると動物病院を後にした。
その昔、私が飼っていた犬はメスの雑種だった、頭が良くアンズという名前だった。
アンズは私に忠実で、なぜか私が学校から自転車で家に帰って来るのがわかるらしかった。
時間に関係なく、アンズがじっと私の帰ってくる方向を視ていると、やがて私が現れると家族が言っていた。
私が進学で自宅を離れた年にアンズは亡くなった
ある日アンズは散歩の途中で倒れると自力で動けなくなった。 動物病院で診てもらうと、高齢と心臓に付いた寄生虫が原因だった。 きちんと予防薬を投与していれば、と悔やまれたが、今と違い情報も治療法も限られていた。
アンズはどんどん衰弱していき、朝起きると夜に眠った姿勢のまま冷たくなっていたそうだ。
私はアンズの最後を看取って上げる事ができなかった。
アンズがいなくなった後にアンズの夢をみた。
縁側に寝転んで、開け放った窓から腕だけを外に突き出すと、アンズは私の手のひらにじゃれついてきた。
私がアンズの頭や首を撫でると、お返しに私の手をペロペロと舐めてくれた
あの時の毛並の感触を、ベロの温かさを私は忘れない…
たとえ夢であっても。
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