狂気

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狂気

カリンは昼間はずっとダンボールで私が作った小屋で昼寝をしている。 ただ朝と夜は、人恋しくなるらしい。部屋の真ん中の1番邪魔な位置に陣取るとお腹を出して撫でろと無言のアピールをする。 何が正しくて何が間違いなのか、わからなくなる瞬間がある。元々正しい事などないのかもしれない。 しかし彼女の温もりと柔らかさは、どんな時でも、絶対的な可愛らしさと癒やしを私に与えてくれた。 おそろしく寒い晴天の冬の夜、いつものようにリビングでカリンを撫でていた。 彼女は安心しきってウトウトし始めていた。 今、私が彼女に水をかけて家の外に追いだしたらどうなるだろう? 彼女の白い体は凍りつきカチカチに固まり、降り積もった雪と見分けがつかなくなるだろうか。 家族同様の私に裏切られた彼女は何を考えるだろう?  寒さで手足や尻尾の先の感覚がなくなり段々と薄れゆく意識の中で、(嘘つき、偽善者)と私を罵るだろうか? それとも、そんな私の元にきた自分の愚かさを嘆くのだろうか? 私にはわかっていた 家族同様の猫が凍っていくのを感じながらその時自分が何を考えているかを。  それはカリンのように、自分を心から信じてくれていた人を私は裏切った事があるから。
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