一 守護霊の玲

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一 守護霊の玲

 僕は巨大な門の外に立っていた。ふしぎなことに門扉も門柱を支える長い城壁も、一面に頭蓋骨か埋めこまれている。所々に金色に輝く観音像の顔があり、そのまわりは頭蓋骨だ。  えらく凝った造作に、よくこんな物を作ったもんだと感心していたら声が聞えた。 「そこで、何をしている?」  「わからない・・・」  自分でもここにいる理由がわからないのでそう答えた。  すると、何かが身体の中を触れるように蠢いて立ち去り、目の前に杖を突いた見覚えある白髪の老人が現れた。たしか、親戚にいた爺ちゃんのような気がする。 「お前の言葉に嘘はないようだ。  ここは人生を終えた者が来る難題門じゃよ。お前、まちがってここに来たらしい。  ただちに手続きするよって、元の人生に戻れ」  爺ちゃんは諭すようにそう言った。 「僕は、まちがってここに来たのか?それを元に戻すのか?」 「そうじゃ。まだ、すべき事があるじゃろう。戻って人生をやり直すんじゃ。  不満か?」  爺ちゃんは僕の顔を覗きこんでいる。 「誰が僕をここに連れてきた?僕が元の人生に戻ったら、良き人生を歩めるように、誰かに指導させてくれないか?」  まちがってここに来たのなら、まちがった事をたくさんしてきた結果だと思った。人生をやり直すんだから、まちがいをしたくない・・・。 「守護霊を付けろと言うのか?  よかろう。(れい)という者をつけよう。  玲の容姿は詮索するな。本人が気にしておるゆえ」  そう言って爺ちゃんは僕から目をそらせた。思いを気づかれないように警戒している。 「わかった。もう一つ頼みがある。僕を大学入学時に戻してくれ。できるか?」 「造作もないこった。ただちに戻そう・・・」  爺ちゃんの声が終らぬうちに、僕の意識は無くなった・・・。
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