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6 無敵ピッケル
「あった! あったぞ! ミア! あった!!」
土壁に穴を掘って掘って掘り続けて目的の通路に出ると、勇者ラルフ様は雄叫びをあげた。寝間着みたいなものはすっかりはだけて、肩やら脛やら太腿やらが晒され土にまみれている。
幻滅が止まらない。
「空気を大切にしてくださぁ~い」
「すまん……」
これで威圧的な性格だったら、私が土に埋めてなかった事にする。
尻に敷かれ体質で命拾いした勇者様なんて、カッコ悪い。
追い抜いてチェストの前にしゃがみ金具に手を掛けると、勇者ラルフ様に肩を掴まれた。
「待て! 罠かもしれない」
「馬鹿言わないでください。私のチェストなんで」
「え?」
「誰の忘れ物かもわからない荷物を我が物顔で検めて、これ幸いと良アイテムを懐に収めてきた人には信じられないかもしれないですが、これは私のチェストです」
「……すまん」
肩から手が離れた。
勇者ラルフ様は私の横にしゃがむと、私の手元をじっと眺めつつ、自然な流れでランプを受け取り、手元を照らしてくれた。よく訓練されている。
ギィィ……
「ほら」
私の愛用品が、しまった時と同じ姿で私を迎えた。
「私のピッケルです」
「お、おう」
懐かしくも頼もしい愛用のピッケルの柄を掴み、私は立ちあがった。そして軽く振ったり回したりして、使い心地を確かめる。そこはさすが勇者ラルフ様で、ひょいひょいと先端を避けた。
「み、見事だ……!」
と感心している勇者ラルフ様には棍棒を渡す。
「行きましょう。仲間割れしているくらいですし、聖女イルヴァ様が旅の疲れで臥せっているって話もたぶん嘘ですし」
「えっ!? イルヴァどうした!?」
「知りませんけど、たぶん同じ毒薬で眠らされているんじゃないですか? そうなると、ここもいつモンスターが湧くかわからないですし」
「大変だ!」
「まあ、このピッケルがあれば無敵ですけど」
「君、何者なんだ……?」
私は振り回していたピッケルを肩に担ぎ、勇者ラルフ様に視線を注いだ。
「だから、鍛冶屋の娘で、炭鉱夫の孫のミアです」
必要なアイテムを外套のポケットに押し込み、ランプを返してもらって、私は改めて地上に向けての近道を歩き始めた。
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