私だけ氷河期

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お兄ちゃんが過保護なのには訳がある 元々うちの家族は関西の都市に住んでいたんだけど 私が小学校五年生の時にイジメを受けたことがキッカケで 父の実家のある四国の街へと移住することになった 六つ違いのお兄ちゃんは受験を翌年に控えた高校二年生で不安もあったと思うのに 『胡桃が大切』と私を優先してくれた 対人恐怖症と拒食症で暫く引きこもっていた私も いつも寄り添ってくれる両親と優しいお兄ちゃんのお陰で 学校へと通えるようにもなった 穏やかな四国での暮らしは 心を癒すには十分で 中学生になってからは更に友達も増えて 嫌な過去は日に日に薄れていったのに お兄ちゃんは、大学へ進学すると同時に家を出たこともあって 離れて暮らす私のことを構いまくり 年々過保護がエスカレートすることになった それは・・・ 二十二歳になった今でも変わりなく続いていて で、さっきの電話に戻るんだけど 三回生から始めていたインターンシップや合同説明会への参加 そして四回生で本格的になった企業面接も 手応えが感じられないまま 三社から不採用通知が届いてしまった 二社から届いた段階で 両親のどちらかがお兄ちゃんに頼んだのか 話は急展開を見せ お兄ちゃんのマンションに間借りしながら 四国を脱出して就活に励もうということになったのだ 引っ越したばかりのお兄ちゃんの新しいマンションは住所しか知らなくて そんな私をいつまでもお子ちゃま扱いするお兄ちゃんの過保護っぷりに拍車がかかったわけ 届いたと連絡のあった荷物は 昨日送ったばかりの私の荷物で 二日後には私自身もお兄ちゃんの住む西の街へと出発する 約十年振りの同居は 就活のことを思えば気が重いけれど それ以外はお兄ちゃんと過ごせることを楽しみにしているのだ この選択が私の人生を変えるなんて 誰が予測できただろうか
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