私だけ氷河期

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冷蔵庫は一人暮らしなのに大型で 驚いたけれど 中身は飲料以外はほぼカラという お兄ちゃんが変わらずとっても不健康だということが分かった 「彼女いないのかな」 こんな豪華なマンションに住んでいて 整形外科医として働くお兄ちゃんは 妹の私が言うのもアレだけど 背も高くてかなりなイケメン だから、今回の同居だって 最初は彼女が居たら申し訳ないないな〜って心配したのに 『残念ながら彼女はいない』 なんてあっけらかんと答えるお兄ちゃんに 条件は良いのに性格に難アリかと慰めの言葉までかけてしまった それでも、もしかしたらの期待を込めていたのに 冷蔵庫から始まって 家中の探索を終えた頃には 彼女のカケラすら見つけられなかった 「さて、お昼ご飯にするか〜」 カウンター上に鎮座する コーヒーメーカーに水を投入して 横に置かれた籠にあるカプセルの中からお気に入りのモカを差し込む ボタンを押すと漂い始めたコーヒーの香りに 漸くひと息つけた気がした コーヒーを飲みながら メロンパンにかぶりついた所で 携帯電話が鳴り始めた 「・・・ヤバい」 表情されたお兄ちゃんの名前に 『着いたらメッセージを』を思い出した 「もひもひっ」 メロンパンを口に入れたまま間抜けに出た私と対照的に (胡桃っ、大丈夫か?何処だ?) お兄ちゃんの焦った声は大きい 「もう、マンションだよ?」 (え、あ、え?マンションなのか?) 「うん、そう」 (無事着いたんだな?) 「うん」 (怪我はないか?) 「ないよ」 (変な人に絡まれなかったか?) 「大丈夫」 本当はウザイなぁって言いたい気分を 連絡し忘れたお詫びとばかりに飲み込んで 過保護に付き合うことにした (夕方帰るまで出かけるのは禁止な) 「えー、だってお兄ちゃんの冷蔵庫カラだよ?」 (買い物も合わせて、夜は胡桃の歓迎会をするから 良い子で待ってるように) 「え?外食?」 (あぁ) 「やったぁ、良い子で待ってるから 早く帰ってきてね、お兄ちゃん」 (あぁ、もちろんだ) 外食と聞いただけで喜ぶお子ちゃまな私を クスッと笑うお兄ちゃんとの電話を終えると メロンパンを食べながら 両親へとメッセージを送った
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