私だけ氷河期

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私だけ氷河期

[不採用] 三社目のソレに頭が落ちるんじゃないかって心配になるほど俯く 確か、有効求人倍率って1を軽く超えているはずじゃなかったっけ? 私だけ氷河期なんて・・・ゔぅ ハァと態とらしくため息を吐いていると携帯電話が鳴り始めた 「えっと」 就活鞄の中に手を突っ込んで 音と振動で主張してくるそれを掴んだ 【高橋柚真(たかはしゆうま)】 ディスプレイに表示されているお兄ちゃんの名前に落ちていた気分が瞬時に上がった 「もっし〜」 (胡桃(くるみ)、荷物届いたぞ) 「早いね」 (あぁ、後は胡桃だけだな) 「うん」 (気をつけて来るんだぞ?電車とかタクシーとか、平気か?」 「大丈夫だって、私も大学四回生なんだからねっ?」 (それでも心配) 「迷ったら地図アプリもあるし 口もあるからその辺の人に聞くし」 (その辺の人はやめろ、そいつが悪人で胡桃が連れ去られるかもしれないだろ?) 「連れ去られる?お兄ちゃん今は令和だよ?」 いつもの様に過保護全開で止まらないお兄ちゃんの口は饒舌 (迷ったら交番な?いや・・・ やっぱ俺が迎えに行こうか?) 「・・・ううん。大丈夫」 (てか、なんでよりによって俺の勤務の日なんだ?) 態とに決まってるじゃん!なんて言えるはずもなく 「お兄ちゃんを“おかえり”って出迎えたいんだもん」 可愛い妹を演じてみる それにコロっと騙されるお兄ちゃんは (・・・胡桃、分かった、じゃあ 俺もなるべく早く帰るから 部屋に着いたらメッセージ入れるんだぞ?) 泣いてるんじゃないだろうか?って疑うような声で最後は諦めてくれた
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