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最初に依頼人に声をかけたこともそうだが、他の人にも自分から声をかけているという事はある程度射程距離がありその中でなら相手の名前がわかるのだろう。
最初から特別な名前を探しているのならわざわざ占いなどしなくてもいいとは思うが、そこは何か事情があるのかもしれない。依頼人に名前を確認してきたこともあるので確実にははわからない可能性もある。相手の名前に目星をつけ、声をかけて確認をして目当てのものじゃなければ占いをして終わる。それなら声をかけたことに対して不自然ではない。
「名前ってのは赤ん坊の頃からその名前で呼ばれ続ける。ゲームみたいに、呼ばれる度に名前ポイントが溜まると考えれば……ああ、そうか」
言いかけてネットで名前占いをしてもらったという人たちの呟きやブログを検索し始める。しかし目当ての記事がなかったのかすぐに諦めた。
『どうしました』
「前に名前は一番身近な強い力だって聞いた事がある。さっき言いかけたけど呼ばれる度に名前に力が蓄積されると考えると、この女に占ってもらって良いことが起きてるってのは怪しい。RPGも魔法使うとMPが減るように、溜まってる名前ポイントが使われて強制的に良いことが起きてるとすればこの女のしている事は決して良い事じゃないはずだ。本来一生をかけて溜めて本人を守ってくれる大切な力を使っちまってるんだからな」
『それって、使われちゃった後はどうなるんでしょう』
「それを知りたくて検索したが、不幸になったとか効果がなくなったって報告はない。勘違いであって欲しいんだが」
話しながらも中嶋は時折依頼人に電話をかけたが一向に繋がらなかった。それがまた不安を増長させる。そんな事をしている占い師に探されているとなるとろくな事ではないのは確かだ。
『サトちゃん、私真玖さんのところに行ってきますよ。一度会ってるし憑依もしてるからわかります』
「ああ、悪い。様子だけ見てきてくれるか」
そう言うと一華はふっと消える。一人残った中嶋はまた占い師に関する記事を集め始めるが、名前でなんとなく思い出した。
”お前、中嶋聡って本名じゃないだろう!?”
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