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御身の男が言っていた言葉だ。そういえばあの男も名前がわかれば相手を呪い殺せるといっていた。今回はそれと同じではないにしても、やはり名前は大切な物なのだ。家族と絶縁しているので自分の名前が何の意味を持っているのかは知らない。字のままなら聡明な人間になるようにということだろう。聡明かどうかは知らないが、こうして探偵業に向いている人間になったのだから名前というのは侮れない。
常用漢字として使われる意味と、本来持つ意味がまったく違う漢字というものもある。真もそうだ。
あまり仕事に関係ないかもしれないが、占い師が何故動揺するほどの名前だったのかは興味がある。真はともかく、玖はそれほど悪い意味だったのだろうか。ネットを使い玖の字を検索して中嶋はわずかに目を見開いた。
玖 漢字の九の代用。黒い色を示す
玖自体は黒を現し、また九の代用でもある。どちらの意味も非常にまずい。黒は黒曜石のような美しいたとえになっているが、古来より不吉とされているのは万国共通だ。そして漢字の九は名前につけるものとしては良くないというのを、事故で亡くなった芸能人のニュースがやっていた時に聞いた事がある。調べてみれば案の定だった。一と九は端の数字なので名前に使うには難しいとされているのだ。
ある意味ここまで不吉な事揃いだとわざとつけたのではないかと思うほど珍しい。こんな事調べなければ気づかない事ではあるが。
見つけた場所でひたすら待ち続けるほど重要な名前だったのなら諦めないはずだ。必ず彼女と接触しようとしてくる。自分の仕事は占い師を探すことだが、もし何か利用目的で占い師が事を構えているのなら今回は適当にあしらって依頼は遂行できなかったと告げるしかない。裏社会の人間でもあるまいし、犯罪に関わるかもしれないという事をわかっていて金のために仕事を続けるつもりはない。警察に関わるのもまっぴらだ。
依頼人の名前があまり良くない意味だというのなら今日会った累にも一応釘を刺しておかねばならないかもしれない。占い師はそんな意味の名前を探しているのだ、会わないほうが良いような気がする。
『ただいまー』
「おかえり。どうだった」
『んー、なんか合コンで超盛り上がってて、依頼人さんをお持ち帰りしようとしてる男の人と肩組んで歩いてる』
「……あっそ」
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