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この占い師は何がしたいのだろうか。名を売りたいのなら名を残す事、例えば名刺を渡すなどすればいい。しかし金も取らず探している時は決して見つからない。
「……探して見つからないなら骨が折れそうだな」
『そうですねえ……私も行ける範囲は協力しますけど。一度会っちゃえば憑依できますし』
「それが一番期待大、といいたいところだけど無茶はするなよ。どうもこの女不審な点が多い。相手の名前を言い当てたのも不可解だ。この間みたいに変なもんに巻き込まれても嫌だろ」
『この間……閉じ込められた事よりもヌメヌメの方が嫌でした……』
うんざりした様子でため息をつく一華に中嶋は小さく笑う。どちらかというとヌメヌメよりそれを取った時の方が嫌だったのだろうが。
町に出た中嶋と一華は手分けをした。まずは占いをされたという場所を徹底的に回る。占い師なら商売場所をある程度決めてまわっているはずだ。そのあたりは一華が生前遊びに来ていたところなので、中嶋がいなくても一瞬で移動できるし戻ることもできる。
たった二人で探すには効率も悪いが仕方ない。中嶋自身この方法で見つかるとは思っていない。有名な待ち合わせ場所で辺りを見渡して過ごすこと一時間程。占い師はもちろん、占いをされているらしい現場も見られない。次の目撃場所に移動しようとして、なんとなく行き先を変えた。それは依頼人が声をかけられたという場所の近くだ。
いつもと違う様子だった占い師。それは占い師にとっても予想外の出来事だったに違いない。何があったのかは知らないが、思わず声をかけてしまったというところか。そうなると今後考えれる行動は二つ。依頼人を徹底的に避けるか、もう一度会おうとしてくるか。情報の少ない今は後者にかけるしかない。
声をかけられたという交差点の近くに来ると不自然にならないようその場にとどまる。そこからさらに一時間程たったが、それらしい人物は見当たらない。依頼人も探偵事務所を利用する前に自力で何度もここには来たがいなかったとは言っていた。となると、徹底的に避けているのかもしれない。
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