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「うるっせえ、ビッグなお世話だアホ。それに囲碁将棋はやらねえよ」
「あ、それいいかもね。普段バタバタ動いてる人ってじっとしてられないから徘徊とか始まるかもしれないし。どう考えても子供や孫に看取られて大往生するとは思えないから一華ちゃんが話し相手になるのが丁度いいんじゃない? 周囲から見れば独り言多くてもあのおじいちゃんボケちゃって、って事でなんとかなりそうだもんね」
「何サラっとクソ失礼な事言ってんだ。俺じゃなくて小杉の老後を看ろ」
『もちろん綾さんのところにも遊びに行きますよ』
「あ、いいねー。私生涯独身貫く予定だから、一華ちゃんがいると嬉しいな」
グっと親指を立ててキラキラとした表情で語る一華と小杉には何を言っても無駄だろうと諦め、中嶋は外を見る。そこで中嶋が固まり、小杉も顔をしかめて窓を見た。
「……」
血だらけの女が蜘蛛のように窓に張り付いていて目が合う。窓の外からかりかりと引っ掻き中に入れてくれとでも言いたげにじっと見つめ……いや、睨んでいる。
「一華、行って来い」
『え、イヤですよ。行って何するんですか』
「お友達になったと見せかけてここに二度と近づくなって言うか、寄るんじゃねえよキモイっつってブン殴って来い」
『どっちもイヤですよ!』
「お前幽霊だろ、何とかしろよ。俺霊には触れねえんだよ」
「サトさん、気持ちはわかりますけど今の言動かなりかっこ悪いですよ」
ぎゃーぎゃー騒ぎながらなんとなく、世の中孤独死などとニュースでやるが、自分はこれに当てはまらないんだろうな、などとしみじみ思う。霊は決して静かになど過ごさせてくれない。今までそれには悪い意味しかなかったのだが、ここに良い意味で静かではない霊がいる。
ふっと小さく笑うと中嶋の携帯がメールを着信し、開いて見ると。
【サト君へ やっぱり十歳離れてたらロリコンに当てはまると思います。だって君が二十歳の時相手は十歳って思うと犯罪でしょ 佐藤】
中嶋は小さく笑みを浮かべたまま……その笑顔を見た一華と小杉が若干引いたのが見えた……思いっきり携帯を女の霊に向けて投げつけた。ストラップに魔除けのキーホルダーをつけていたので、携帯が直撃すると霊は「ギャッ」と悲鳴を上げて消えてしまう。
後は、開いていた窓からスポーンと道路に向って携帯が飛び、地面にたたきつけられた後バスが来て、
グチャ。
『あ』
「あーあ……」
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