名の強さ

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名の強さ

 名前。真玖、累。名前に相応しくない漢字。そこにいるはずなのに会えない二人。占い師を探している累。様々なパズルのピースが散りばめられ、頭の中で組み立てられていく。  名前はその人をあらわす一番身近な力だ。名前がある事で存在が認められ、許される。いくら自分は自分だと言い聞かせても他人から認めてもらえなければ存在しないのと同じだ。  呼ばれることで蓄積し自分を守ってくれる、もっとも近く大切な大きな力。そう言ったのは佐藤だったか、清愁だったか。  しばらく考え込んでいたが、メモを取り出し考えていた事をまとめ始める。 『何かわかったんですか?』 「いや、今整理してるとこだけど……もしかしたら急いだ方がいいかもしれない。まず何を優先させるかな、依頼人に自力で占い師を探すなって事か」  一華にはわけがわからないが、中嶋は携帯で依頼人にコールをかける。しかし待っても相手が出ないらしく諦めて電話を切った。 『えーっと……つまりどういう事ですか?』 「占い師が何をしたくて占いをやってるのかわからんから置いとく。ただ目的の一つは特別な名前を探してたんじゃないか。それが依頼人に当てはまったと考えていいだろう、あれからずっと探してるみたいだからな。最初にふらっといなくなったのは信じられなくて動揺してたか何かじゃないか。何もなければ二、三日もせずにあの場所で二人は再会できてたはずだ。でも別の要素が絡んでそれが今できなくなってる」 『別の要素?』 「占い師がどうやって相手の名前わかるのかは知らんから、超能力みたいなのがあるとする。俺らみたいに霊感ある奴もそうだが、強すぎると逆に弱点になる。俺みたいに引き寄せたり、小杉みたいに体調不良になったり。コイツももしそういうモンがあるとしたら、名前に関する事には強くもあり弱くもあるかもしれない。真玖に勝る強い名前が出てきて周辺の捜索ができなくなってるのかもしれない」 『強い名前……あ、累さん。確かに伝説にまでなってる人の名前、それも怪談話じゃ強すぎますよね』  占い師と累の捜索期間が見事にかぶったので占い師は八方塞になっているのだ。【今日も来ない】という言葉からもあの場所で何度も待っていたと思われる。今日自分達が行ったように、心当たりの場所をしらみつぶしに探すしか方法がなかったのだ。
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