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プロローグ
もし笑顔を浮かべた誰かを見た時、その頭上に牛の顔と肉、男性から出た衣服が見えたとしたら。それは一体何を示しているのだろうか。
これは今我々が生きる世界とはまた別の世界のお話。
三十年前、その国ではあらゆる能力を保持した人間が存在していた。彼らは市民に紛れ、時に能力を駆使し、生活を送る。
そんな能力者保持者が団結し、反乱を起こすことを恐れた国家は、大きな塊にならないよう国を八つの地区に分断し、その境目に壁を設けた。
『禁止』の能力を持ち司法を担う第一地区。
『生成』の能力を持ち製造を行う第二地区。
『転換』の能力を持ち商いの管理を行う第三地区。
『表現』の能力を持ち制作を行う第四地区。
『操作』の能力を持ち冠婚葬祭を担う第五地区。
『可視』の能力を持ち方向指針を決める第六地区。
『承認』の能力を持ち役所業務を行う第七地区。
そして壁の隙間になり、中央に存在する無法地帯、第ゼロ番地区。
大きな壁に遮られた八つの地区は親交を持てず、狭い空間で過ごすことに。
しかしそれから二十年後、つまり十年前この限られた空間を危惧した人間により、各地区を繋げる役割を果たす施設が、無法地帯とされた第ゼロ番地区に建設される。
それが『中立配達所』だった。
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