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結局、しろほしは、俺が用を足しに行った公衆トイレの裏手の斜面に、身を固くして座っていた。
それを見つけたのは一時間ほども公園内を歩き回ったあとだ。俺がしろほしなら――、俺が猫ならば――、飼い主のことが大好きな猫ならば、どうする? 飼い主のことを追いかけていくだろう。そんな当たり前のことにようやく思い至って、トイレの周りを探して、見つけた。
「しろほし!」
俺の声に、しろほしははっと顔を上げて立ち上がった。俺は斜面の落ち葉に足をとられながら駆け寄り、抱きしめる。しろほしも俺にしがみついてきた。
「ごめん……! 怖かったよな、ごめんな」
しろほしは俺の肩口に額をすりつけてくる。小さく身体が震えていた。
一年前、冬の冷たい雨の日にしろほしを保護したときのことを思い出す。あのとき、ほんの小さな子猫だったしろほしも、こんなふうに震えていた。
ごめん、しろほし。もう目を離したりしないから。ごめん。
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