11月3日(水)ー Day3:かぼちゃ

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11月3日(水)ー Day3:かぼちゃ

 夕方、しろほしを連れて駅前のスーパーへ買い出しに行った。ハロウィンの名残りのかぼちゃ各種が安売りしている。ふと気を惹かれて、カット済みの冷凍かぼちゃをカゴにいれた。それから安い合いびき肉と、チューブ入りの生姜も。俺は自炊はほとんどしないし、料理好きでも得意でもない。しかし煮物だけは、食えるレベルのものがつくれる。数年前に半年ほどつきあっていた男のおかげだ。  あとは朝食用の食パン、インスタントコーヒー、牛乳、ヨーグルト、野菜ジュースーー、いつもの食材をカゴに入れていく。ペットフードの棚で足が止まった。自宅に買い置きしたキャットフードは、食べる猫がいないから減らないままだ。俺はしろほしの顔を見る。しろほしは、棚に並んだキャットフードを見上げてキョロキョロ。そして、自分が猫だったときに食べていたドライフードのパッケージに目を留めて「これ、知ってる」とでもいうような顔で俺を見た。白身魚味のカリカリ。しろほし(猫)はこれ以外のキャットフードを食べてくれない。俺は苦笑いした。 「うん、しろほしはそれが好きだったよね。でも今は食わないんだろ?」  あたりまえだろ、という顔をされた。日に日に表情豊かになっているような気がする。俺はペットフードの棚を離れてレジに向かった。そしてレジの手前で上着のすそをクイクイっと引かれる。しろほしが俺の服を引っ張っていた。 「どうしたの」  しろほしが棚を見上げている。俺もその視線につられて棚を見上げた。 「ああ、フルーツグラノーラ。なくなりそうだから買っておこうね」  俺はいつも買っている少量タイプではなく、徳用タイプのをカゴに入れた。  しろほしが人間の姿になって俺の前に現れたとき、ちょっと困ったのが「しろほし(人間)は何を食うのか」ということだった。キャットフードや小皿に注いだミルクなどには見向きもしない。人間だから当たり前か。それならばと俺の食事を分けてやろうとしたが、それも食わない。  しろほし(人間)が好きなのはフルーツグラノーラだった。俺が自分の朝食用にフルーツグラノーラをボウルに出していたら、「それが食べたい」という顔をしたしろほしが背後に立っていたのだ。別のボウルに少しだけ出してやると「これだけ?」という顔をされたのでもう少し追加。しろほしはボウルに手を突っ込んで、カリカリと音をさせながら食べた。 「牛乳、入れる?」  一応、聞いてみたが「入れるわけないでしょ」という顔をされた。カリカリの食感が好きなのかな。  それ以来(といってもまだ数日だが)、しろほしはフルーツグラノーラばかり食っている。偏食なのは猫のときも、人間のときも変わらない。
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