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(…まったく)
さんざん、
『振り回すのはいいけれど、振り回されるのはごめんだ』
と言い続け、振り回していたのは自分の方だと思っていたのに。
気がついた時にはその術中にはまり、その身一つで向かってきたお前に、夢中にさせられていた、だなんて。
「おれを落としたその責任──ちゃんと、とれよ?」
「あはははっ! それ、する前にも言ってなかった?」
「…うるせぇ」
いつもと変わらない減らず口に向かって唇を寄せると、笑っていた颯太も目蓋を伏せ、覚えたての感触を求めて唇を近づける。
最早口づけを交わすのに、遮るものがなくなった二人の唇が自然と重なり、甘く、濃厚なひとときを…愉しむ。
触れ合うことも、口づけを交わし合うことも、自然の流れだったのだと思い合いながら…
僅かなひとときも大切にしよう、と見つめ合う瞳で想いを交わした二人は、
恋人の時間を、
余すことなく堪能したの、だった──…
END.
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