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第1話 自己分析
「えーよくわからない!!!」
そう言って君は大学の課題を放り出す。
いつもの光景だ。
僕は床に落ちた課題のレジュメを拾い、君を宥めながら一緒に問題を解く。ここまでが僕らのワンセット。
自分で言うのもなんだが、僕は勉強が得意だ。親から口煩く勉強しろと言われてきたのもあるが、幼い頃から周りより勉強出来た。勉強出来ると周りから褒められるのも心地良かった。
それに伴って、知らないことは恥ずかしいことだし、罪に近いものだと思うようになった。
だから、「わからない」が口癖の君に出逢って、僕は衝撃を受けたし、初めは君に軽蔑の眼差しすら向けていたんだ。
でも、君がわからないのは学校の勉強だけで、それ以外のこと、特に自分自身についてはよく知っていた。
好きな色や好きな食べ物のこと。
自分の得意なこと、苦手なこと。
将来やりたいことや人生で大切にしていること。
僕が今までまともに考えてこなかったこと、言葉に詰まる問いにスラスラ答えられる君が眩しく見えた。
「…あーなるほど!完全に理解したよ!!」
完全に理解できていない者が言う台詞を口にして、君はまた課題に取り組む。
「本当に何でも知ってるんだね、凄いなぁ」
真っ直ぐに褒めてくれる君を見て僕は思う。
いや、君の方が人生で大切な事を沢山知ってるよ。君の方が凄いし尊敬する。
まだ恥ずかしくて直接伝えられないけど、本当にそう思っているんだ。
そんな君と比べると勉強以外は知らない事が多い僕だけど、一つだけ最近知った事があるんだ。
僕は君のことが好きなんだ。
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