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第1章
『コウチャン オハヨウ! コウチャン オキテ!』
浩介は、目覚まし時計にセットされた妻の声で目が覚めた。
スーツに着替え閉ざされたカーテンを開くと朝の光が射し込み、美味しそうな料理の香りがした。
台所では妻の八千代が浩介の弁当を作っている。
浩介は鼻歌を歌いながら階段を下りると台所を覗いた。
「八千代! どうしたんだ!」
其所には、青白い顔をした八千代が倒れていた。
ゆっくりと目を開いた八千代は弱々しい声で浩介に言う。
「……浩ちゃん、ごめんね、直ぐお弁当作るからね」
浩介は立ち上がろうとする八千代を抱きしめ、耳元で囁く。
「八千代、今日は良いんだよ。もう良いんだ……」
「浩ちゃん……」
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