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が、構想を練る中で、やはりイカロスは墜落死させるべきだと思った。天界を一度見た後のイカロスの翼は、太陽の怒りによって溶解するのではなく、高所の寒さ故に、蝋は硬くなり、翼はしなやかさを失い、羽ばたくことができなくなり、墜落死するのである。実際に雲海を踏む事が出来なかったイカロスは、
「後もう少しだけ高く飛べたら」
という科白を口唇から漏らし墜落して絶命するのである。
こう言った顛末に佐藤は霊峰の地肌を想起した。通常墜落死する人間は、その寸前にショックで気を失うらしいが、神話の英雄であれば、激突する地面を見ていても不思議ではない、と彼は考えた。
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