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「それにしても、仕事先はその県だったんじゃないの」
「ああ、うん、本店の上司さんが、異動しろっていってて、色々考慮して二号店のこっちになったんだよね」
「今度は厨房で何したんだお前は」
「廃棄処分されそうになっていた牛筋たくさん集めて、ことこと煮込んで賄いカレーにしたら怒られてそうなった」
「廃棄処分だろ」
なんで使ってんの、と問いかけると、幼馴染は胸を張った。
「いらないなら頂戴って言って、じゃああげるって言われたから、皆においしいカレー作ったのに、何やってんだって怒られちゃって」
「ことこと煮込むのに、仕事場のコンロをふさいだからだろうが……」
この幼馴染の職場で、延々とコンロを一口ふさぐのは致命的だろうに。
そりゃあ、手が付けられない阿呆だと思われて、僻地に飛ばされる事もありうるだろう
この男の移動先なんて知らないけれども。
「そうなんだ」
そして依里に指摘されて理解する当たり、この幼馴染は抜けている。
「まて、なんで私があんたの職場事情をあんたより理解しなきゃいけないの」
「それはヨリちゃんが最強だから?」
にこにこ笑っている幼馴染が、マグカップのお湯まで飲み干して笑う。
「あー、あったかくておいしかった! ありがとうヨリちゃん」
「で?」
「で?」
依里がこの先の事を聞くべく、問いかけると、相手は首を傾けた。
こいつ何も考えていないに違いない。
「言っておくけれど、私の家は、ルームシェアが出来る部屋じゃないからな?」
「駄目なの?」
「駄目。ここを借りる時の契約書にちゃんと、一人暮らしっていう条件が付いているんだから。守らなかったら追い出されるに決まっているだろうが、契約なんだから」
一人暮らしと契約して、二人で暮らしたら問題が発生するに決まっている。
重大な契約違反に他ならないだろう。
あっという間に追い出されてしまう。
「今日は仕方がないから、余った布団でいいなら貸してあげるし、風呂も使っていい。でも明日からはちゃんとマンスリーマンションとかを借りて、そこで暮らす事」
「……ヨリちゃん引っ越すのに、引っ越し先にお世話になっちゃいけないの?」
「まて、どこを見てそれを察した」
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