epilogue

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ー2012年ー秋 「カランコロン」 「はーい。いらっしゃいませ」 彩が店先に出るとそこには涼介が立っていた。 「涼介くん?」 彩は驚いて言葉が出なかった。 ジャケットとパンツに身を包んだ涼介は精悍な顔つきだった。 「その節は美月が大変お世話になりました、、」 途端に彩の表情が曇った。 「涼介くん、聞きました、、」 「はい。美月とは別れました」 涼介は淡々と言葉を続けた。 「私のせいでごめんなさい、、」 彩は今にも泣き出しそうだった。 「いえ、良いんです。それより美月を守ってくれて本当にありがとうございました」 「そんな、、」 「美月に生きがいと優しさと温もりをありがとうございました、、」 「僕と離れていた美月を守ってくれて本当にありがとうございました、、」 その目には涙が滲んでいた。 「涼介くん、、」 彩の目からも涙がこぼれ落ちていた。 「美月は彩さんのことを実の姉のように慕っていました」 「彩さんが居てくれたから僕は夢を叶えるために東京に旅立つことが出来ました」 涼介の瞳から止めどなく涙があふれていた。 「また、美月がここを訪れた時はどうか姉妹のように接してあげて下さい」 「それだけ伝えたくて、、」 『卒業写真』がフォンテーヌに流れていた。 「それじゃ、僕はこれで、、」 涼介がフォンテーヌを出ようとすると彩は突然何かを思い出したように涼介を呼び止めた。 「涼介くん!」 「ちょっと待って、、」 彩は店の奥に行くとすぐに戻って来て一枚の手紙を涼介に差し出した。 手紙には矢野美月の文字があった。 「涼介くんがこの店にきたら渡して欲しいって美月ちゃんから、、」 彩は静かにそう告げた。 手紙の文字を見た涼介の頬を涙が伝っていた。 「ありがとうございました、、」 涼介は彩に深々と頭を下げて微笑むとフォンテーヌを後にしたー 秋の街並みは銀杏の葉がハラハラと落ちていて風に舞っていた。 金色色の並木道を涼介は一歩一歩歩いた。 住み慣れた思い出の街並みを抜け美月と通ったキャンパスを訪れた。 ベンチに腰掛けて涼介は手紙の封を開けた。 そこには懐かしい美月の文字が踊っていた。 「相沢涼介様 涼ちゃん。涼ちゃんがこの手紙を読んでいる頃、涼ちゃんは遠い所に行ってしまっているね、、 涼ちゃんは私の青春の全てでした。 涼ちゃんに出会えて共に笑い、過ごした日々を私は一生忘れないよ。 涼ちゃんも新しい自分の道を歩いて行ってね、、 涼ちゃんが私に与えてくれたもの、沢山の愛、その大切な想い出を抱いてこれからも生きて行くね、、 どうか、涼ちゃんも幸せに生きて行ってね、、 涼ちゃんに出会えて私は幸せでした。 2012年        矢野美月」 手紙を読み終えた涼介の頬を一筋の涙が伝っていたー 「美月ありがとう、、」 涼介は手紙をそっとしまうと美月と過ごした思い出のキャンパスに別れを告げた。 ー金色色の並木道にはいつの日かの美月が笑っていたー きっと人は誰にでも一生忘れられない人が居るのだろう。 この世界で出会えた大切な人たちの面影を抱いてー fin                            
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