タイムカプセル

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呼ばれたことに安堵した様子の洋子は、慌ててその場を走り去った。真澄に対してもう話すことが無くなったように見える。 ── そっか〜、洋子ちゃん婚約したんだね。今、幸せなんだろうね〜…… 洋子の後ろ姿を見つめながら、真澄はニッコリと不気味に微笑んで(つぶ)いた。 「洋子ちゃん、また逢おうね」 その時、真澄の後ろのほうから、山本先生がまた大きな声で叫んでいる。周りが森で囲まれているこの場所では、その声がうるさいぐらいに響き渡る。 「おお〜い!誰か、西山来るって聞いてないか〜」 それを聞いた男子の一人が集まっていた女子達に聞いてきたのである。 「西山って確か、高本達のグループからハブられてたやつだったよな〜。……誰か連絡したっけ?」 「ちょ、ちょっと!私達は別にいじめてなんかなかったし……ね、ねぇみんな?!」 4年2組だった女子生徒はざわめき始めた。 女子達は自分が面倒事に関わりあいたくないのか、誰も(うなず)かなかったが、しばらくしてその中の一人が手を挙げ話し始めた。 「……あ〜、私一応、連絡先調べたんだけど、なんか〜親ももう死んじゃってるみたいで、実家も無くなっちゃってたから、結局どこにいるかわからなかったんだよね〜」 「……じゃ〜仕方ないな。この手紙は先生が預かっておくから、もし誰か連絡ついたら西山に伝えておいてくれ」 真澄はそんな周りの様子を見渡しながら、誰にも悟られない静かな声で "クスクスッ" と笑った。 ── あ〜可笑(おか)しい。西山はみんなの目の前にいるっていうのに、だ〜れも気が付かないなんて 真澄は可笑しくて可笑しくて仕方がなかった。 そして自分の手の中にある手紙を、今度は4年生の時の真澄に向けて、再び心の中でゆっくりと読み始めた。 ──────── 『15年後のあなたは今、どこにいますか?』 『何をしていますか?』 『……幸せになっていますか?』 ──────── ふふふ…… ねぇ真澄? 4年生のあなたに特別に教えてあげる
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