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しらなみ
白い熱さだ。
いや、熱さに色なんてないけど。
例えば暖かな橙の夕陽や、バーナーの青い無慈悲な炎じゃない。
白熱電球の。
あのジリジリとした。
眩しさだ。
田舎の在来線。
大きな窓から鋭い陽光が差し込む。
うなじを焼かれる。
向かいの座席に移ろうかと考える。
地元の学生らしい若者。
ちょっとした遠出らしいおばあちゃんら。
何故かこちらの座席に座らず。
やや隣と近くとも、進行方向左側を選んで座っていた。
その理由が今になってよくわかる。
今さら移動するには。
例えば目の前。
若い男と女子高生との間に空いた気まずさの一席に、その尻をねじ込ませるしかなく。
よく知らない田舎の電車内で目立ったことはしない方がいいと考え。
あと数分だし、と。
自分を宥める。
それに。
両隣が2席ずつ空いていて、広々しているほか、こちらからは反対の座席に座る乗客越しに、青々とした濃い空と。
白波を。
垣間見ることができる。
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