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「サイキさん、
これ見てください。
カイチさんとの連絡で使っていた裏番号。
ナナセさん、
頻繁にスイスに電話をかけてます。
通話内容はもちろん提出されてません」
「ナナセの大学時代の師が、
確か今チューリッヒにいる」
「連絡をとってみます。
機械屋はどうですか?」
「カイチへの怒りから、
包み隠さず全部話してくれた」
自分が捕まるなら。
カイチも道連れのつもりらしい。
「カイチさんはどうしますか」
「ナナセの身柄をおさえるまで、
ここで保護する」
「その後は…」
「…」
サイキの苦い表情を見て。
イクノはそれ以上聞けなかった。
くそ!
くそ!
ナナセを探さなきゃならないってのに。
こんなところで足止めを食うなんて。
鉄格子の向こうには見張りもいる。
何もできない。
落ち着け。
考えろ。
簡易ベッドに腰を下ろす。
あの螺旋階段だ。
どこかで見た気がするんだ。
思い出せない。
ナナセと関わりがあるはずなんだ。
でも。
何をどう考えればいいのか分からない。
思う出そうとしても。
さっき見た画像しか思い出せない。
思考がクリアに整理されてしまって。
何も引っかからない。
螺旋階段。
螺旋階段。
ちっとも思い出せなくて。
情けなくなる。
ふと。
見張りの捜査員に。
通信が入り。
鉄格子の前から離れていく。
その時だった。
カチャリ。
かすかな音がして。
見ると。
電子錠のロックが。
解除されている。
緑色の光が小さく点滅している。
そばには誰もいなかったのに。
どういうことだ?
考えている暇はない。
足音を忍ばせて鉄格子を抜ける。
見張りは端末に向かって何か話している。
「だから、
誰だよあんた」
そっと背後に忍び寄り。
『後ろの奴に変わってくれる?』
「後ろ?」
振り返った見張りに。
「ごめん!」
拳を振り下ろした。
『もしもし、
カイチ?』
聞き覚えのある声だ。
端末を拾い上げる。
「洗い屋」
声を聞くと界析を思い出して。
鳥肌が立つ。
「もしかして、助けてくれた?」
『手がいるかと思って』
鍵のシステムまで掌握してるって。
大丈夫かよ。
『大した手間じゃないよ。
あの子の依頼で裏口は作ってあったから』
システムへの侵入口ということだろう。
あの子というのは。
ナナセのことか。
「ありがとう」
『言うなら私じゃなくガキに言って。
あの子に懐いてたんだ』
『別にそういうわけじゃない。
なんとなくだ』
横から声が割り込む。
「ありがとう」
『いいって』
「ついでにもう一つ頼みたい」
周囲を見渡して。
「もう一度、
俺に記憶界析をしてくれないか」
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