夢夜

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「ナナセさんの自宅のパソコンから、  5件の夢の界析データが出ました」 「家で界析をしていたってことですか?」 「それもありますし、  それ以前に…」 パソコンの画面を覗き込んで。 イクノは目を見開く。 「サイキさんに報告してくる!」 大会議室へ急ぐ。 その足が。 ふと。 ペースを落とす。 疑問が湧いた。 隣の小会議室へ立ち寄る。 ナナセの同僚たちが待機していた。 今は夢の界析は全面ストップだ。 「教えてほしいことがあります。  ナナセさんが界析していた夢について」 印刷した画像を広げる。 「見たことあるよ。  これも、これも」 「俺はこれも」 「職場でも界析作業をしてたってことですか」 「職場でも、って、  あいつ家でもやってたのか」 「この5件、  個人的に調べていたようなんです」 「そんなのを職場で堂々と界析してたとは」 「この窓なんて、  アドバイスしてやったし」 「家では界析できないこともあるんですか?」 「夢も記憶界析と変わらない。  情報の取捨選択にビッグデータが使える分、  ここの方がいいだろうけど、  読むのは人の目だ。  この夢って目星をつけたあとなら、  ここだろうが家だろうが、  関係ないと思うけどな」 そうなると。 わざわざ職場でデータを出力したり。 界析作業をしていたのはなぜだ。 「でも情報のセキュリティを考えたら、  家ではやらない方がいいよね」 「それだ!」 ナナセは。 見られることを恐れて。 家で作業を進められなくなった。 夢のデータだけを持ち出して。 職場で界析していた。 おそらく。 家は監視されていた。 だから姿を消したんだ。 「ありがとう!」 今度こそ。 大会議室へ。 「どうした」 「分かりました!  ナナセさんが姿を隠した理由が!」 「何!」 「一連の予知夢は全て、  ナナセさんのみた夢だったんです」 ナナセが予知夢を。 でも考えれば辻褄が合う。 あの本格的な界析装置。 自分の記憶データを書き換えるためだと。 勝手にそう思っていた。 自分の夢を。 界析していたんだ。 「鍵はナナセの知る何かじゃなく、  ナナセ自身だったわけだ」 「はい。  だから姿を消したんです」 鍵である自分を隠した。 「ナナセさんの予知夢を、  知る人がいます」 それにはナナセの過去を探る必要がある。 サイキは。 自分の頬をさする。 カイチに殴られた箇所が痛む。 「書き換え前の記憶データは、  抜き出せたか」 「はい」 立ち上がる。 「俺が界析する」
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