しらなみ

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「ぶはっ!」 水から上がる。 支えられ。 引っ張られて海から上がる。 浜に手をついて折れ込み。 ゲボゲボと水を吐き出す。 背中をさすられている。 目も。 鼻も。 喉も痛い。 苦しい。 呼吸が荒い。 腕が震えている。 暑いはずなのに。 震えている。 「大丈夫、  もう大丈夫だから」 ナナセの声だ。 背をさするのはナナセの手なのか。 隣にいるのは。 「ナナセ…?」 「何?」 タオルで顔を拭われる。 その手を掴んだ。 止まらない震えが。 ナナセにまで伝わりそうだった。 「あの画像は何だ」 そうだ。 デジャヴじゃない。 あれはナナセのファイルにあった光景だ。 なぜそれを。 カイチが見たのか。 それも今。 見たのか。 「あれはなんだったんだ。  教えてくれ。  俺が見たのは何なんだ…」 視界が澄んでくる。 ナナセは怯えていた。 いや、困惑か。 掴んだ手も。 髪も。 まつ毛も濡れている。 「ごめん」 手を離した。 掴んでいた腕。 血が止まって白くなっていた。 「ごめん」
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