溢れるほどの愛

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溢れるほどの愛

 触れるだけだった口づけは、次第に熱を持ち始める。求めるように天音が舌を伸ばせば、絡んだ舌先に優しく愛撫された。 「誠くんのキス、好き」 「あんまり、可愛いこと言わないでよ」  ゆっくりと離れていった唇を、追いかけるように天音は手を伸ばす。そっと指先で彼の唇に触れると、心がふわりと温かくなった。 「キスすると胸があったかくなって、すごく心地がいい」 「伝わってるのかな、俺の気持ち」  再びキスをくれる唇は、優しくて甘くて、頭の中が痺れるような心地になる。うっとりと目を細めた天音は、広い背中を強く引き寄せた。  そうすると滑り落ちた唇が首筋を撫でて、ゾクゾクとさせられる。 「いっぱい触ってくれたら、わかるかも」 「天音さんって、俺の気持ちをかき乱す天才だよね。もう、心臓が痛いくらいにやばい」 「だって、早く、……誠くんが欲しいから」  キスをするだけでも、こんなにも心地いい。一つに繋がったら、どれほど心が満たされるだろうか。  求められれば応えるけれど、天音はあまり身体を重ねるのが好きではなかった。  だというのにいまは、誠に触れて欲しくて仕方がない。期待が膨らんで、身体が疼いているのが自分でも分かる。 「ここ、触っていい?」 「うん、触って。気持ち良くして」  天音の言葉に誘われるように、誠はいまだに熱を持ち昂ぶっている場所へ手を伸ばす。彼の指先が伝う感触だけでそこがひくんと震え、身体に疼きが増した。  すがるように誠を見つめれば、スウェットに手をかけられて、下着ごと脱がされる。あらわになったものは、しとどに蜜を溢れさせていた。  溢れたものを塗りたくり、優しく扱かれると腰が痺れる。誠の手に触れられるだけで気持ち良さが増す。  声が止まらなくなり、天音が指を噛むと、やんわりとその手を掴まれた。 「一回、イったほうがいい? 辛くない?」 「平気。誠くんが嫌じゃ、なかったら、……ここ触って」 「……あ、……うん」  ひどく顔を紅潮させる誠の手を、導くように引き寄せれば、彼は天音の尻の奥、小さな窄まりを優しく撫でる。 「ローションで濡らせばいいのかな?」 「うん。指で触って、拡げて」 「痛かったりしたら言ってね」  たっぷりと手のひらにこぼしたローションを温めると、誠はゴムをした指先で少しずつ窄まりをほぐしていく。  初めてだと言っていたのに、急いた様子を見せないところは彼らしい。それどころか天音を気遣って、ひどく優しく触れてくれる。  少しずつ指先が含まされると、久しぶりの感覚に天音は身震いした。指を抜き挿しされ、くちくちと水音が響くと、そこに天音の甘い声が混じり始める。  誠の手は媚薬のようだ。触れる場所からどんどんと熱が広がり、頭の中を溶かされそうな気持ちになる。 「すごい、ここってこんなに拡がるんだ」 「んっ、そんなに、まじまじ見ないで」 「ごめん。こんな小さなところに本当に入るのかなって、思ってたから」 「……あぁっ、そこ、だめ」 「いま、中がすごいうねった。もしかしてここがいいところ?」 「だめ、誠くんのが欲しいから。いまはそこ、しないで」  指先で優しく前立腺を撫でられて、腰がビクビクと跳ねる。すぐにでも上り詰めてしまいそうになり、天音はシーツを掴むと、必死で快感をこらえた。 「誠くん、もう挿れて。我慢、できない」  縋りつくような自分の声に天音は驚く。相手を喜ばせたくて、わざとねだるようなことを言う時もあったが、これはもう懇願だ。  早く早くと急く気持ちで頭がいっぱいになる。じわりと涙が浮かべば、感情がさらに高まった。 「うん。天音さんを見てたら、俺も限界。どの体勢でしたら身体が楽?」 「このままでいい。誠くんの顔が見たいから、このままして」 「わかった。じゃあ、挿れるね」  熱くて硬いものをあてがわれて、天音は涙を浮かべて何度も頷いた。そうするとゆっくりと押し広げるように、誠のものが挿入される。  指とは比べられないものに、浸食されるその快感に、天音は溢れさせた涙をこぼした。 「あ、やばいな、これ。すごい」  先ほどまではまだ余裕のあった誠に、焦りが滲んで見える。男臭くて艶のある彼の顔を、天音は初めて見た。この表情がいましか見られないものだと思えば、一気に興奮を煽られる。  吐き出す息が熱くなり、天音はまた自分の指をきつく噛んだ。 「動いて、いい?」 「うん。……して」  いつもより低い声。それを聞くだけで、気持ちが昂ぶっていく。腰を鷲掴みされれば、膨らんだ期待で胸がいっぱいになる。  天音を気遣うようにゆっくりと律動を始めた誠は、時折こらえるように息を吐いた。たまらなく色っぽい彼を見ているだけで、快感が増す気分になる。 「あっ、ぁ、……誠くん、もっとして、気持ちいい」  想像以上だった。触れる手、唇、繋がった場所。すべてから誠の感情が流れ込んでくるようで、多幸感と快感がこれまで感じたことがないほど天音を絡め取る。 「お願いあんまり煽らないで。気持ち良すぎて、馬鹿になりそう」 「そこ、そこっ、もっと! もっと突いて」  ねだる言葉に火をつけられたのだろう誠は、腰をきつく掴んで、激しく天音の身体を揺さぶる。腰を打ち付けられるたびに、天音の口からは甘ったるい声がこぼれた。 「ま、ことくんっ、きもち、いいっ、……あっ、ど、しよう、こんなに気持ちいいの、初めてっ、たまんないっ」 「天音さんの中、やばいくらい気持ちいいよ」 「誠くんっ、お願い抱きしめて。気持ち良すぎて怖い」  昂ぶる感情の行き場が見つからず、天音は両腕を伸ばした。すると誠は身を屈めて、身体を抱き寄せてくれる。  引き寄せられるままに、彼の腕の中に収まれば、下から緩やかに突き上げられた。その刺激だけで背筋を快感が走り抜けて、天音は誠の首にしがみつく。 「気持ち、良くて、溶けちゃいそう」 「天音さん、キス、しよう」 「する」  誠の肩に手を置いたまま、天音は彼に向かい合う。そして熱のこもった瞳の中に自分がいるのを見つけ、腹の奥が疼くような気持ちになった。 「はあ、んっ」  唾液を滴らせ、何度も口づけを交わす。舌を伸ばして彼のものを絡め取れば、舌先を吸われて、繋がった部分がじんじんとする。  無意識に天音の腰が揺れたのに気づいたのか、誠は頬を赤らめながら、その様子を見つめてくる。 「キスも、気持ちいい」 「天音さんちょっと、エッチすぎる。俺の理性が、もうズタボロなんだけど」 「んっ、だってすごく気持ちいい。誠くんと、ずっと繋がってたい」 「はあ、またそういうこと。……無理、もうこれ以上は我慢、できないっ」 「んぅっ」  ふいに噛みつく勢いでキスをされ、下から激しく突き上げられた。自重で深く貫かれ、奥まで押し広げられる、その感覚がどんどんと気持ちを膨らませる。  気づけば天音は快感を追うように、自ら腰を振っていた。 「もっと激しく、してっ、……あっ」  刺激を求めてなおも腰を揺らせば、誠は天音をベッドに沈めた。さらには脚を担ぎ、深く熱をねじ込む。ローションが粘つく音を立てるほど、激しく穿たれて、天音は身体をくねらせ嬌声を上げた。 「や、ぁっ、イクっ、イキそうっ」 「もうちょっと待って、俺もイキそう」 「駄目、もうっ」  引き裂きそうな勢いでシーツを掴むと、天音は身体をヒクつかせる。いまにも高みに上り詰めそうな自分をこらえながら、汗を滴らせる誠を見上げれば、まっすぐと視線が合った。  彼の目を見るだけで、いまにも我を忘れてしまいそうになる。 「あっんっ、誠、くん。お願い、僕だけを、感じて、僕の中でイって、……ぁあっ」 「天音さんっ、天音さん! 駄目、もう止まんない。全部食べたい」  ガツガツと食らいつくように、何度も身体を揺さぶられて、天音は身体をのけ反らせながら果てた。それと同時に腹の奥で誠の熱が爆ぜたのを感じ、うっとりと目を細める。  荒い呼気を吐く誠へ手を伸ばすと、ゆっくりと身体を寄せた彼が甘いキスをくれた。 「大丈夫?」 「うん、平気。……誠くん、好き」 「俺も天音さんが好きだよ」 「嬉しい、いますごく幸せ」 「良かった。これから先は、俺がずっと幸せにしてあげるから」 「ありがと」  頬を撫でる手から愛おしい、そう囁く声が聞こえる。
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