愛があれば何度でも逢える

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 愛が渾身の力を込めた一球を投じる。逢依の胸元を鋭く突き刺すかのように快い音を響かせ、差し出されたグラブに収まった。 「愛……」  逢依はグラブを強く握り締め、唇を真っ直ぐに結って固まる。野球を辞めると決めた以上、愛の力を借りるわけにはいかない。自分は一人で戦わなければならない。その思いから、心のどこかで愛を遠ざけようとしていた。  けれどもそれは大きな勘違いである。戦うフィールドが変わっても、辛い時や苦しい時は頼って良いのだ。もちろん立場が逆になることだってあるかもしれない。ただそうしてこれからも助け合えれば、必ず互いのためになるはずだ。 「……そうだね。私たちはいつまでもコンビだよ。何かそれを聞いて、凄く気持ちが楽になったわ」  逢依の表情に晴れ間が差す。自分は一人じゃない。そう思えたことで胸に渦巻いていた蟠りが一気に解け、ほんの少しプレッシャーが和らいだ。 「そう? なら良かった。ルーあいの笑顔は久々に見た気がする」 「ああ……、言われてみればそうかも。最近笑ってなかったわ。ふふっ」  二人はかつてグラウンドで見せていたように、清く爽やかな微笑みを見せ合う。足元に落ちていた無数の枯葉が風に吹かれ、次々と冬の空に舞い上がっていった。 《ルーあいファイト! 私も一緒に戦うからね!》  迎えた共通試験当日。会場に到着した逢依の元に、愛から激励のメッセージが送られた。更には写真も添付され、そこには『必勝! 合格祈願』と書かれたハチマキ?を頭に巻いた愛の姿が映っている。 「……いや、愛の方が気合入ってんじゃん。おかしいでしょ」  逢依は嬉しさと気恥ずかしさの混ざった苦笑いを浮かべる。それから大きく深呼吸し、相棒と共に戦いの場へ向かうのだった――。 Go to next stage……
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