珠音のやりたいこと

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『痛いよお……。珠音の奴、女のくせに力が強いだもん!』 子どもの頃、私はよく男子を泣かしていた。決して私がいじめっ子だったわけではない。子どもなら誰もがするような喧嘩をして、単純に私の力が強いから勝ってしまうだけだ。 『また珠音かよ。力が強過ぎるんだから、もうちょっと考えろよ』 だが周囲はいつも、私が悪いような目を向けてくる。別にどちらが悪いわけでもないのに、力が強いことで悪者扱いされる。それがコンプレックスだった。 女子で力が強くて何が悪いのか。私はその反骨心から、野球を始めたのだ。 結果的に私の力は野球に活きた。瞬く間に長打を量産し、男子相手でも敵無しとなる。そして気付いた時には、誰も私のことを悪く言わなくなっていた。  いつの間にか忘れていたが、これが私の野球を始めた理由である。私は力の強い自分が間違っていないことを、野球を通して証明してきたのだ。 ……では、これからはどうするべきか、どうしたいのか。その答えを出すのに、それほど時間は掛からなかった。 プロという最高峰と舞台で、自分の力がどこまで通用するか試してみたい。子どもの頃にコンプレックスだったもので一番を目指せたら、どんなに楽しいことか。 胸の奥が急激に熱を帯びる。悩んで悩んで原点に立ち返った末、ようやく私は自分のやりたいことを導き出せたのだ。 「……なるほど。面白いそうじゃん」 心は決まった。私は息付く間もなくスマホを手に取り、佐藤さんに電話を掛けていた――。 Go to next stage……
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