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「え、関東の大学?」
進路に関して両親と話し合った際、私は女子野球部がある関東の大学へ行きたいと告げる。食卓を介して目の前に座る両親は、それを聞いて若干びっくりしたような反応をする。
「うん。少しでも姉貴に近いところで野球をやりたいんだ。当然お金が掛かるのは分かってる。だからできるだけ入学金とかが少なくなるような形で受験しようと思ってるし、合格したらバイトして自分でお金も貯める。下宿先だって安いところを選ぶ。何なら姉貴に頼み込んで一緒に住んだって良い」
関東の大学に通っていれば、今よりも簡単に横浜へ行けるようになる。もし姉と一緒の場所で暮らすことができれば、これ以上のことは無い。
「……駄目かな?」
両親が互いの顔を見合わせる。それから二人で同時に鼻息を漏らし、私の方へ向き直す。先に口を開いたのは父の方だった。
「……正直、こうなるだろうとは予想していたよ。美輝は海羽の背中を見て育ってきたからな」
「お姉ちゃんを追い掛けたいって思いがあるなら、私たちは反対しない。だから行ってきなさい」
「ただし大学に行く以上は勉強を疎かにするなよ。野球と共にどちらもしっかりやること。金のことは心配しなくて良いから」
「ほ、ほんとに⁉」
てっきり反対されるかと思っていた。私は感極まりそうになるのを堪え、二人に感謝を述べる。
「お父さん、お母さん……。ありがとう!」
大学で力を付けて、いつか姉の同じ舞台で野球をやりたい。姉妹二人で美しく輝くその日まで、私の長い長い歩みは続く――。
Go to next stage……
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