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《先輩に来年の新入生で良いの紹介できないかって聞かれちゃってさ、真っ先に洋子が浮かんだんだよね。どうかな?》
「それは光栄なことですけど……。私で良いんですか?」
亀ヶ崎には杏玖や珠音など、私よりももっと良い人間がいる。にも関わらず何故これと言って特筆すべき部分の無い私なのだろうか。
《何言ってんだよ。洋子だから良いんじゃんか》
「……私だから?」
《うん。私が見てきた洋子なら、絶対うちでも活躍できるよ。だから一回前向きに考えてみて、また答えを聞かせて。質問とかあれば遠慮無くしてもらって良いからさ》
「はあ……。分かりました」
電話が切れる。スマホから短い音が繰り返される中、私は暫く固まっていた。空さん経由とは言え、自分が強豪大学からスカウトを受けるとは。私はお約束かのように頬を抓ってみるも、痛みは感じない。どうやら夢ではないようだ。
レギュラー落ちしかけた時に励ましてもらうなど、空さんには非常にお世話になった。だからこの誘いとても嬉しいし、ぜひ受けたい。ただ私の実力が西経大で通用するのか。はっきり言って自信が無い。
『洋子だから良いんじゃんか』
……いや、もし通用しないのなら、また足掻いて覆してやれば良い。空さんのあの言葉は、敢えて私を選んだ意味は、そういうことなのではないのだろうか。
「……やるだけ、やってみようかな」
私はそう呟き、スマホの通話終了ボタンを押す。“何でもない日常”は始まったが、新たな目標も見出された。これからまた、必死に走り出さなければ――。
Go to next stage……
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