優しい関係を築くために

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 ただそうして心を許せる仲間が増えていく内に、私の中には今までとは違う形の悩みが芽生える。今は皆が受け入れてくれるから、私は素の自分でいても許される。けれどもそれをそのまま良しとしておいて良いのだろうか。皆の優しさに甘えて油断していると、いつか愛想を尽かされるかもしれない。  特に気掛かりなのは、恋人の龍也(たつや)に関してだ。高校に入って出会った私たちは一年生で同じクラスになると、半年ほど経った辺りで彼からそれとないアピールを受けるようになった。その朗らかな人柄に触れる中で私も次第に好意を抱き、二年生に上がる直前で正式にお付き合いを始めた。それから早一年半、二人でいるとどんな時もリラックスできる。大切な存在であることは言うまでもない。 「優築はさ、今度どこに行きたい?」  ある日の放課後。私は龍也の家にお邪魔していた。受験勉強の息抜きも兼ねて久々に出かけようとデートに誘われ、行きたい場所を聞かれている。 「うーん……。どこでも良いよ。龍也が好きなところで」 「……そっか。ならどうしようかな?」  それまで楽しそうだった龍也の顔が、心做しか曇ったように見える。またやってしまった。『龍也と一緒ならどこでも良い』という意味で言ったのだが、私の無愛想な様子からもっと後ろ向きな意味で捉えられたかもしれない。 「……あ、あのさ」 「じゃあさ、動物園でも行くか。受験勉強があると家とか学校とかで屋内に籠りがちだし、定期的に外で過ごさないとね」 「ああ……。うん、良いと思う。そうしよう」  咄嗟に弁解しようとした私だったが、龍也が話を先に進めたためあっさりと諦める。態々言わなくても龍也なら分かってくれているはず。こうしてまた、私は甘えてしまうのだ。
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