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片足が、ありえない方向に曲がっている。スーツから突き出た白いモノが、本来見えてはいけないモノだと気づいて、オレは目を背けそうになった。
よく見れば、オレの足元には引きずった血の跡が続いている。だから男から引きずるような音がしたのだ。
見たくないのに、オレはライトを上へと向けていく。スーツは本来の色がわからないくらい赤黒く染まっている。片手も、痛々しいほど真っ赤に染まり、絶えず血が落ちていた。
震える手で顔を照らすと、虚ろな瞳と目があった。頭から血を流している男は、顎から血をしたらせている。
どうして、最初に気づかなかったのだろう。
「もう、着きます、よ」
口元に弧を描くのに、目が笑っていない。とても歩けるような状態じゃないはずだ。
――ガコッ。
オレは恐怖でバイクから手を離してしまった。道に転がるバイク。嗤う男。オレは恐怖で後ずさった。
パリッ、とガラスを踏んだ音で我に返り、すかさず足元を照らす。大量の割れたガラスが散らばり、量が多い方へと辿っていくと、壁にぶつかり大破している乗用車が目に入る。
拉げた運転席のドアは開き、その下には血だまりが広がっている。
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